オモキリ橋の靴々

憮前 来

第1話 お散歩

橋に行こうと思いました。図書館でも公園でもありません。橋です。人が渡る橋。今日はそこに行こうと決めました。

お気に入りの星のマークがついた、水色のくつをビリビリと音をさせながらはいて『行ってきます』と言って家を出ました。


橋に行くことはつまり散歩ということなのですけど、

とくだん散歩が好きなことというわけではないのです。

ぽんっとあの橋に行きたいなーと思うのです。

それは、学校にいる時だったり、夜寝る時だったりします。

そして、それがたまたま今日だっただけなのです。

よく行くわけではありません。

半月に一回ぐらいでしょうか?それぐらいです。

でも、やっぱり前よりも行くきかいは多くなっている気がします。


橋につきました。あたりには誰もいません。

というかここにいる時に人に会ったことがありません。

言えることは、それぐらいです。本当にただの橋なのです。

あ、うそをつきました。ひとつだけ、普通じゃないところがあります。

この橋の真ん中には毎回くつが落ちているのです。

いつどんな時に行っても、しっかりとつま先をそろえてこちら側に向いているくつがあるのです。これを目当てにこの橋に足を運んでいるのに忘れていました。

ふかくというやつです。

今日は、小さい黄色のながぐつでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る