142 入浴


 朝食と飲み水を持ってエンフが戻ってくると、パストラはすぐに泣きついた。


「うちの子の服が! その怖い子のせいで濡れてしまったので! 大体同じ大きさの、その子のものを貸してもらおうとお願いしたら、いきなり刃物向けられたんです! 何もしてないのに! ひどい! あいつらおかしいです! 近づけないで!」


「………………」


 あきれすぎて、カルナリアは何も言えなかった。


 みなの表情から察した様子で、エンフはパストラに厳しい顔を向けた。


「今日は、ここを出るまで少しかかるので、その間に乾かしな。他人のものを貸してもらおうなんてのはだめだよ。あんたがその子に貸してっていわれたら、子供のを渡すのかい?」


「脅されて! 怖くて! おかしいでしょう! あいつが悪いのに! 悪いのはあいつ、あの奴隷なんですよ!? 奴隷ですよ!?」


「ここじゃ、奴隷も貴族もないよ。客人か、あたしらかしかないよ。文句あるならひとりで先に進みな。騒ぐな、騒ぐ原因を作るな。今んとこあんたが一番うるさい。それだけだよ」


 エンフはまったく相手にしないまま、点呼を取り、みなの体調を確認した。


 パストラは、息子のカルリトがレンカのせいで昨日から具合が悪いとまくし立てたが、エンフはこれも相手にしなかった。


「男どもの方に比べりゃずっとましさ。あっちは血が流れたそうだからねえ。水の上なんで大事にならずにすんでるけど」


 昨日の、雨の中でずっと立ちつくす羽目になった者たちのうちで、質の悪い雨具でつらいことになった者が、質のいいものを持っている者から盗もうとして、それを気づかれたそうで。


 つかみあいから、刃傷沙汰になったとのことだった。


「それをやったやつらはどっちも、ファラの力を使ってやる価値もないってことで、傷口を火で焼いてふさいでから、この先は両腕を縛られて引っ張られて歩くことになる。そうされたくなきゃ、おかしな真似はしないこった」


 パストラは恐れおののいたが、それでもなお自分をにらんできた。


 負けるかとカルナリアもにらみ返した。


「んあ……」


 剣呑な空気をぶちこわして、まだ半分以上眠りの中にいる巨乳が、ようやくふらふらと寝台から出てきた。


 やはり、まぶたを垂れ下げ朦朧もうろうとしていると、こちらの胸が異様にうずくような妖しい美女である。衣服も乱れて、きわめて。手にメガネをつまみ持っているのもいいアクセント。


 昨日、痛い目に遭わされたはずのカルリトが、生唾を飲む音がはっきり聞こえた。


「…………」


 カルナリアの喉はそんな音を鳴らしていない。

 ただ、昨日汚泥を拭ったあとの、色々支えたり手の平に乗せたりしたたっぷりした感触を思い出しただけである。ついでに手がちょっとわきわきと動いたが瑣末さまつなことである。


「ファラ。おはよう。調子はどうだい?」


「ん~~、色々、揉むものが足りないなあ……手が寂しいよぉ……未成熟なふくらみでも、魅惑の熟女でも、美少年のお尻でも、この際鬼上司の鍛えられた胸の筋肉すなわちおすっぱいでもがまんするっす……」


「それで起きてくれるなら、あたしのならいくらでも揉ませてやるけどねえ」


「!」


 いきなり、くわっと目が見開かれた。


 メガネを装着して美女から変態になり、エンフを見て――眉を悲しげに傾けた。


「ありがたいけど…………あまりにもそう堂々とされてると、楽しみがない…………揉むってのはそうじゃない……そこに、恥じらいと、抵抗と、その上でなおやられてしまう敗北の美しさがないと……!」


「ははは、色気が足りないってかい!?」


 エンフは豪快に笑い、そうするとさらに色気とは遠ざかった。


 カルナリアも、自分を恥じつつ手を握って気持ちを抑えた。


 なぜかレンカの視線を感じた。

 今の一部始終を観察され、冷徹に評価を下されてしまったような気がした。きわめて不名誉な評価を。


「で、体調は? 今日は、どのくらい魔法使えそうだい? あんた次第で移動の時間や道筋が変わるからね」


「そうだねえ……まあ、全力の、三割ぐらいかな……でも火とか水とかまわりの探索とかの、普通のことは大抵できるんで、問題ないよ。ただ昨日みたいに大ケガ治すなんてことになったら話は別だけど」


「そうかい。助かるよ」


「で…………?」


 いきなりファラは言った。

 カルナリアには意味がわからない。


「刃物抜いた馬鹿どもは置いといて、まずそうなのは三人だね」


 どうやら、体調を崩した者が出たらしい。

 慣れぬ山歩き、雨に打たれた後で、ちゃんとした寝床で横になれたわけでもないとなれば、仕方ないことではあるだろう。


「病気は、怪我治すのとは違うからね……私、医者じゃないんで、とりあえず力を与えはするけど……そっちの専門は、あのぼろぼろさんの方なんすよねえ」


 フィンのことを言われてカルナリアは反応した。


「お薬がいるんですか。じゃあ、ご主人さまに来てもらって、診てもらえば…………みなさんがまだ怖いなら、私が呼びに行きます!」


「カルちゃんを単独行動させる方が怖いっす。慌てない慌てない」


 盛り上がった自分をカルナリアは恥じた。


「さて、全員起きたところで、今日の予定だ。まずこのあと朝メシ、それから順番に体を洗う。人数いるから、ちょいと時間かかるよ」


 昨日聞かされた通り、湖で体を洗えるのか。それだけで気持ちが弾む。

 ……王宮では入浴は日課であったことを思うと、何とまあ遠いところまで来たことか。様々な意味で。


「なんで、今日は、ここを出るのは昼前。その間に病人にはできるだけ休んで、何とか回復してもらおう」


「具合悪いままだと、どうなるんですか? ここに置いていかれるのでしょうか?」


「歩けない状態になったら、そうするしかないね。でも……」


 エンフは険しいものをにじませた。


「その場合、多分、すぐに殺されるよ」


「!」


案内人あたしらの誰かをつけておいても、そいつごとやられかねない。ここの連中にとっちゃ、仲間でも何でもない、下界の、いいもの持ってるやつってだけだからね。看病する理由が何一つない。死体は、アリに食わせるか湖に沈めちまえば、動けるようになったからここを出ていった、後は知らんって言い訳しておしまいさ」


「そんな……」


「ぎりぎりで生きてるからね。こいつらが特別にひどいってわけじゃない。このグライルはそういうところだってだけなんだよ。あたしたちだって、足手まといかかえることになったら同じこと考えるし、実際やったこともある」


 重たいものが、その場の全員の腹に落ちた。

 昨日、まさにそうするところを見せられている。足手まといとなったモンリークを早々に片づけようと。


 その上でカルナリアは、昨日のファラとの会話も思い出していた。


 ファラの主であるセルイたちに力がなかったら、ゾルカンたち案内人は、ファラを自分のものにしようとしてくるだろう……。


「あんたら全員に言っておく。今回は、ここに立ち寄るいつもの時より、かなり危ない状態なんだ」


「え……」


「ここの連中からすれば、今回は客がやたらと多い、女も何人もいる、それならいい思いできるかも……と考える。実際、期待してた。でもそうはいかなかった。ふざけんな。そんなら、やっちまえ……ってなるやつが出かねない」


「こっちの方が人数多いし、強いのだって多いだろ」とレンカ。


「そうさ。でも、、こわがって、悔しがって、恨んで……俺より強くてこわいやつはみんな死んじまえ、ってことで襲ってくるやつはけっこういるんだよ。直接じゃなく、罠をしかけたり、こちらが失敗するように仕向けたりね」


「………………」


 逆恨みですらない。

 何もされない、得られない、もらえないことを恨むとは、カルナリアには意味がわからない。


 しかし、否定はしなかった。

 経験を積んだエンフが言うのだから、そういう心のはたらき方をさせて、行動に移す者は、実際にいるのだろうと思うべき。


 これまでもそういう、狭い世界しか知らなかった自分の想像を超えた基準で判断し、自分には思いもよらなかった理屈で行動を決める相手に、何度も出くわしてきたのだから。


 そう、絶対に助けてくれると思っていた「じい」の判断…………聞かされた実兄ランバロの残虐な行為の動機……。


 さらには、あのトニアの衝撃的な振る舞いも、もしかするとそういう者たちの心象をやわらげるための、いわば献身なのかもしれなかった。


「ここを出る時が一番危ない。その心づもりでいるように」


(どうすれば、こんな殺伐とせず、できるだけ多くの人が、安穏と、ぐうたらにやっていけるようになるのでしょうか……)


 カルナリアは深く考えこんだ。






 それはともあれ、朝食が配られた。

 また魚で、串に刺して塩を振って焼いただけの、単純なものだった。

 ただきわめて新鮮であり、種類も色々だった。

 夜明けに湖に出していた船で獲ってきたものかもしれない。


 それとパン、薄い野菜の葉を一枚。

 昨日上から見たところ、畑のようなものは村の中にちょっとあるだけだったので、野菜類は貴重品だろう。案内人たちが運んできたものかもしれない。


 昨日の疲労の分、体がもっと栄養を要求していたので、カルナリアはこっそり、持っている中では傷みやすい携帯食料を口に運んだ。それほどがっつり燻したわけではない燻製肉の薄切り。もう肉を口にいれることは問題なかった。強く乾燥させたりやたらと塩をきかせたものではなく、風味豊か。脂とうまみに満ちたそれを噛みしめつつ、自分は強くなったと実感する。

 この強さで、今日はちゃんとフィンに近づいてみせる。



 朝食を終えて、全員、村に入った時と同じように体をしっかり隠してから、家の外へ出た。


 まだ山に隠されて太陽は出ていないが、空はすっかり明るくなり、澄んだ青さが目に嬉しい。


 湖畔に連れていかれた。

 水面は、空とは違う深い青色で、これもまた美しい。


 水上住居にカルナリアは見入った。

 大きないかだ、そこに木の皮か何かで編んだらしいむしろを張り巡らせた、簡素なもの。それが三つつながっている。

 今回のように大勢の来客があったり、蟻の襲撃か何か、危険があった時にだけ使うもののようだ。


 そこにつながる板を渡って、男の客たちがぞろぞろ上陸している真っ最中だった。


 一晩中揺れるいかだの上にいた者たちは、湖畔に降り立つと、一様にほっとした顔をする。


「ゴーチェさん。脚の具合はどうですか?」


 怪我人は陸上の家に寝ることを許されていたので、モンリークと顔を合わせずに彼と話をすることができた。


「ああ、カルス。君のご主人様の薬のおかげで、かなり良くなったよ。普通は今日の方が腫れて、痛むものなのに、もう治ってきている。杖を使えば、何とか歩くことだって……」


「無理はなさらないでください。それで悪化させたら大変です。今日もあの子に乗っていいですから」


「すまない……」






「よーし、お前ら、生きてたな! 点呼!」


 ゾルカンが姿を見せ、班がまた再編された。


「病人が出ちまったからな。そいつらをひとまとめにする」


 案内人たちの医療担当者だろう者と共に、ファラが診て回っていた。容態を聞いてから、昨夜女性たちに施したのと同じような癒しの魔法を軽くかけている。

 手を縛られた状態で血の気をなくしている者も二人いた。先ほど聞いた、刃傷沙汰を起こした者たちだろう。


 ゾルカンは、病人を置いていくとは言わなかったので、カルナリアは少しだけ安心した。


 貴族班は、もうひとりバルカニア貴族が判明したので、その者もまとめられた。

 今までの案内人ではなく、強面こわもてが担当することになった。

 相手が貴族でも容赦なくぶん殴りそうな巨体と怖い顔。


 いつもの、案内人の判別方法や合い言葉については、昨日と同じと言われる。ここの住人たちに聞かせたくないようだ。


「今日はこのあと、順番に、そこん中で体を洗う」


 湖水に半分せり出している、妙な建物があった。

 どうやら浴場、体の洗い場であるらしい。


「体をしっかり洗える場所は、バルカニアへ着くまでに、三つある。そのひとつ目がここだ。汚れは病気のもとだし、さっぱりすると気分も良くなり、元気に歩けるようになるからな。しっかり洗っておくように。

 それが終わったらここを出る。西の山を登って、中腹あたりの野営地で休むことになる。途中に面倒なところがあるので、休憩と準備をその前で行う」


 今日の行程を説明してから、ゾルカンは目つきを鋭くして、周囲を見回した。

 ここの住人たちを警戒しているぞ、と客たちに示す仕草。


 実際、住人たちは、案内人たちが作る警戒線の向こう側で、こちらをしきりにのぞきこんできていた。

 敵意を見せているわけではなく、むしろ笑顔で手を振り友好的だとアピールしているが、こちらの持ち物をうかがい、いいものがないかと品定めしている目つきでもあった。


「順番待ちの間、あいつらが近づいてくるだろうから、気をつけるように。何を言われても、手を出されても、徹底的に無視しろ。持ち物は見せず、隠せ。何かあれば俺たちが対処するから、呼べ」


『浴場』の中から煙が上がり始めた。


 入浴が始まった。


 女性班は、男性客たちの陰に隠れて順番をじっと待つ。


 パストラが、夫のライネリオのところに行って、カルリトともどもこちらを指さして何か言っていた。露骨な敵意と怒りの顔。

 さすがに夫は、妻子だからといってその言い分を無条件で受け入れこちらを敵視することはせず、困ったように首を振りなだめようとしていた。


 東側の山向こうから太陽が顔をのぞかせる頃、自分たちの入浴の番が来た。


「浴場」は、棒を持ったエンフとレンカ、そしてセルイたちが周囲を守ることになった。


 先に入浴をすませたセルイは、昨日はさすがに雨に打たれてくたびれ始めていたのが、すばらしい優美さを取り戻している。


「案内人たちにも怪しいのがいますからね。私たちが守りますので、どうぞごゆっくり」


 カルナリアは冷ややかな視線を向けつつ無視したが、パストラとアリタは、貴公子然とした彼の容貌にうっとりした。

 中身を知らないのに、と腹立たしく思う。


 ちなみに、カルリトは父親と一緒にさせられるようだった。

 したがって、いま入浴するのは、自分とパストラ、アリタの三人だけである。


 中に入ると――何もなかった。


 細長い建物である。

 湯舟などというものはなく、そもそも床がなく、傾斜した地面、半分から奥が水に浸かっている、それだけ。


 つまり、建物といっても、波打ち際に、囲みを作って屋根をつけたというだけのものだった。


 ただ、水中部分は石でできており、おおむね密閉されていた。


 火が焚かれており、平べったい石が焼かれている。立ちのぼる煙はこれか。

 それを放りこんで温めた湖水に入る、ということだろう。

 水中には、何度も焼いては冷やし焼いては冷やしを繰り返した結果割れたらしい石がいくつも転がっていた。


 奥の方には小窓があり、それを開くと湖水が入ってきて、水温を調節したり、水を入れ替えたりできるようだ。小舟を浮かべてそれを担当している者がいる様子。


「手伝いますよ~」


 ファラが入ってきた。


 自分自身とレンカはあの洗浄の魔法で洗えるので、ここで入浴する必要はないらしい。


「女の人は、特別に~~」


 杖から魔法が放たれ、水が熱めにされ、かつ浄化されたようだった。


 小瓶から何かをしたたらせると、花のような、いい香りが漂い出す。


 嬉しそうに、荷物をそれぞれ地面に置いて、女性たちは着ているものを脱ぎ始めた。


 ファラはにこやかだが――杖を地面に突いて立つ、その目は一切まばたきしていなかった。

「記録」しているのは間違いなかった。


 人妻のアリタは、脱ぎ方にも妙な色香があった。

 姿勢や、肌を露出させてゆく順番や、その際の仕草ひとつひとつに、妙に目を引きつけ、悩ましい気分を催すものがある。


 ファラの目が明らかに彼女に向いている。


 風神ナオラルさまこの変態に罰をと祈りつつ、カルナリアも自分の荷物を置き、マントを外して、着ているものを脱いでいった。

 さすがにここではパストラも何もしないだろう。


「うわ……!」


 自分の肩に、色濃い、紫色のアザができていた。


 原因はすぐ思い当たった。昨日、あの汚泥に踏みこんだ際に、肩に乗せられた枝の束。下手をするとなまじな成人男性なみの重さがあったのではないか。それをかなりの時間背負っていたから。


 そうと自覚すると、筋肉痛を含んだ、かなりの痛みが襲ってきた。


 しかし。


 武人たちが時々口にしていた、名誉の負傷という言葉の意味が、本当にわかった。

 このアザは、みなを守るために自分の身を投じたご主人さまを、助けるためについたもの。


 これこそが、何一つ恥じることのない傷というものなのだ。


「…………治すよ」


 ファラが寄ってきて、杖を近づけ治癒の魔法を施してくれた。

 どうしてそのアザができたのか、察したようだ。

 恩に着せるようなことは言いたくないので何も言わないでいたが。


「ありがとね」


 小さく言われた。





 ――先に入った裸の女性ふたりの横で、裸の自分も温かくされた湖水に入ってゆき、傾斜に身を横たえて、持参の道具で体を擦る。


 変態ぶりはともかく、ファラのおかげで湖水が最高の湯加減になっていることは事実で、実にありがたく、気持ちよかった。


 この村にフィンが来ていたらどうしただろうと想像した。


 一緒に入ってくれただろうか。

 まさか、自分たち一般女性の後で、戦闘担当のファラやレンカと一緒という割り当てだったら。

 その時は許さぬ。ファラとレンカも、タランドンのあの四人ともども、将来の制裁名簿に名前を記してやる。


「服も、きれいにして、乾かしますよ~」


 ファラが、脱いで置かれている人妻アリタの衣服に杖の先を向けると、昨日、あの汚泥を浄化したように、水の球が杖の先に現れて、衣服を飲みこみ、ぐるぐる回転させ始めた。


 回転が止まると、水が流れ落ちて、今度は魔力だけの球が広がり、風が――恐らく温風が渦巻いて、衣服を乾燥させてゆく。


「魔導師というのは、本当にすごいのですね……!」


 アリタが珍しく強めに言ってきた。


「むふふ、天才ですから」


 同じことを義務的にされたパストラは、ありがたいのだろうが、感謝を口にできないでむすっとする。


「さて、ではカルちゃんの――」


 ひどくニヤニヤして、カルナリアの衣服および下着に近づいてきたファラだったが。


 その動きと言葉が突然停止した。


「!」


 凍りつく。


 昨日、この魔導師がなった次の瞬間、何が起きたか。


 死んだ。

 終わった。


(お許しくださいご主人さま! もう一度お会いしたかった! あとお顔を!)


 ――が。


「静かに!」


 魔力爆発ではなく、鋭く言われた。


「………………」


 身を沈めている温かな湖水に、細波が立った。


 ズン…………と、地響き。


 ごく小さいそれが、一定の間隔を置いて、ズン……ズン……ズン……と、何度も繰り返されて。


 徐々に、大きくなってきた。


「みんな、出ろ! 急げ!」


 外から、レンカの声がした。


!」







【後書き】

魔導師がいると実に便利。それでようやくさっぱりしたと思ったら、いきなり危機が。次回、第143話「石人」。


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