第三章[彼女の思い」その7

「…あ、アソシアード!」

 宇沙が焦った様子で現れた。

「お前……!いったい今までどこに………」

「そんな事より大変だよ!」

「大変………?」

 普段の余裕しかないような宇沙の態度とは全く違うことに、何かを感じて彼は彼女に続きを促す。

「御枝ちゃんが、危ないよ…!」

「なんだと!?」

 それは、ただ事ではない。宇沙が動揺を見せるぐらいなのだから。

「詳しく聞かせろ!」

 彼は宇沙の両肩を掴んで揺らしながら半ば叫ぶように言う。

「……自然王が」

「自然王がなんだって……」

 突如、倉庫の外で轟音が鳴った。

「!?」

 アソシアードは急いで倉庫を飛び出す。

「な………なんだ、あれは!?」

 外はかなり暗かった。雨こそ降っていないが、雷が何度も鳴り響き、非常に不気味。

 そんな中、空に向かってそびえ立つものがあった。

「塔………!?」

 かなり複雑な形状をしており、翼のようなものを持ち、脈打つように光る巨大なそれは、どこか生物を思わせる。

 色は黒や紫で、白く各所が発光している。

 そしてその頂点に。

「………あれは」

 女神機関アーフが、傷だらけの御枝と睨み合っていた。

「………一体」

 その背後には、距離があるゆえにぼんやりとしか見えないものの、確かに、見覚えのある形がある。

 アソシアードは直ぐに思い至った。

「まさか………。自然、王………!?」

「そうだよ。………どうやら、重大な嘘があったみたいだよ……」

 宇沙は首肯して言う。

「それは、どういう……?」

 冷や汗を流す宇沙を横目に見ながら、緊張のある声でアソシアードは問う。

「……自然王は、全員を殺す気……それが、目的だったんだ……!」

 その言葉を聞き取ったのか、自然王は大仰に頷き、

『そなたらは、戦わねばならない。殺し合うのだ』

 無感動に、そう言い放ったのだった。

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