いけいけ勇者様35

最上司叉

第1話

そして翌日俺は目を覚ました。


日課のトレーニングが終わり次第ドラゴンの男を倒しに行くことになっている。


ドラゴンの女は捨てられたとか言っていたが多分全部を話していない。


まぁ俺は頼まれたことをするだけだ。


少し心は痛むが。


「準備はできたのかの?」


「あぁ、いつでも大丈夫だ」


「では行くとするかのう」


「あぁ」


そう言うとドラゴンの女はドラゴンの姿になった。


俺は背中に乗る。


そして飛び立った瞬間魔王がこちらを心配そうに見ているのが見えた。


魔王には悪いことをしたなと少し後悔する。



そしてドラゴンの女は何処かの街近くの森へ降りた。


「この森にいるのか?」


「そうじゃ、頼んだぞ」


「あぁ分かった、行ってくる」


そう言うと俺はドラゴンの男が暮らしているという小屋へと向かった。


俺は小屋付近にやってきた。


「誰だ?!」


突然背後から男の声がした。


俺は剣を抜き振り返りながら構える。


「どうやら敵みたいですね」


「…」


俺は何も答えない。


「まぁ良いでしょう」


そう言いながらドラゴンの男は一瞬で間合いを詰めてきた。


「早い!!」


俺は剣で攻撃を受けながら後ろにさがる。


「どうしました?逃げるだけでは勝てませんよ」


俺は剣を構えて集中する。


もう1回ドラゴンの男が近づいてきた時がチャンスだ。


「こないのならこちらから行きますよ」


きた!!


俺はドラゴンの男が攻撃する時にできる一瞬の隙に全力で攻撃を叩き込んだ。


「グハッ」


ドラゴンの男は倒れた。


「な…かな…か…やり…ま…すね…」


「お前に恨みは無いがすまないな」


俺がそう言いながらドラゴンの男にとどめを刺そうとした瞬間後ろから知らない女の声がした。


「辞めてください!」


「きて…は…ダメ…で…す…」


「誰だ?」


「その人を殺すなら私を殺してください!」


俺はドラゴンの男に聞いた?


「恋人か?」


「あな…たに…は…かんけ…い…あり…ま…さん…」


俺は剣を収めた。


「こ…ろさ…ない…ん…です…か…?」


「頼まれただけだからな」


「?」


「お主は甘いのう」


ドラゴンの女がそう言いながらこちらに歩いてきていた。


「誰ですか?」


「あ…なた…でし…た…か…」


「久しぶりじゃのう」


知らない女がドラゴンの男に聞いた。


「知り合いなんですか?」


知らない女を無視してドラゴンの女は俺に突然言ってきた。


「帰るぞ」


俺は驚き聞き返す。


「いいのか?」


「気は済んだからのう」


「そうなのか…」


俺は訳が分からない顔をしていた。


「まぁそんな顔をするでない」


「後で説明してくれ」


「そうするかのう」


そう言いながらドラゴンの女はドラゴンの姿になった。


知らない女は驚いている。


俺は背中に乗る。


ドラゴンの男はドラゴンの女に小さな声でありがとうと言った気がした。


そして俺たちは街に帰ってきた。


俺とドラゴンの女はカフェに入りお茶を注文した。


「あの男と何があった?」


「直球じゃのう」


「あぁ」


ドラゴンの女は少し悲しそうな顔をしながら答えた。


「あの男は妾の婚約者だった男じゃ」


「!!」


俺は驚いた。


「他に好きな女ができてのう、妾は捨てられたのじゃ」


「それは…それで殺そうとしたのか?」


「本気で殺そうとは思って無かったがのう」


「そうか…」


「本気で殺そうとしたのなら妾がやっておる」


「そうだな」


「なに、もう終わったことじゃ」


「そうか…」


俺はそれ以上何も言えなかった。


そして俺たちは家に帰った。


その日俺は久しぶりに魔王と魔物退治に向かった。


魔王が少し拗ねていたからだ。

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