姉さんの大親友に告白されたら、次の日姉さんが親友たちと絶交してた

ミナトノソラ

刹那の出来事

 今日は姉さんの友人がこの家に泊まりに来ている。

 月に一回、姉さんたちが行っているお泊り会ってやつだ。


 俺は姉さんたちの邪魔のならないようの自室に引きこもっており、最近は姉さんから友人が泊まりに来ている時は絶対に部屋から出ないようにと念押しされてしまった。


 これもあれだろう。一か月前のお泊り会の時に俺が食事を取りたくてリビングへと向かった時に姉さんの友人さんとすれ違ってしまったことが要因だろう。


 やはり女子同士でお泊り会をしているのに同じ屋根の下に異性である俺がいるのは姉さんたちの不安をあおってしまっているのだろう。


 だからと言ってずっと部屋にいると出来ないことが多くある。例えば食事や飲み物、入浴などだ。


 その問題を解決するために姉さんの結んだ約束が、俺が部屋を出るときは必ず姉さんに連絡するということだ。

 どうやら俺が連絡すると友人さんたちが皆姉さんの部屋に集合して男である俺と接することを無くすためらしい。


 わが姉ながら本当に賢いな。

 弟なんだから少しは信用してくれてもいいと思っているのは内緒だが…。








 ◇


「星音さ。好きな人とかいるの?」


「…実はいるんだよねー」


「えー、年下?年上?」


「年下ぁー」


「えー、年下なの?」


「うん、舞も一緒だよね?」


「…そうだね」


 へー、星音も舞も年下が好きなんだ。

 私と同じだな。

 それにしてもさっきから舞がずっとそわそわしているけれど、何かあったのかな。この家には私たちと弟しかいないはずだけど。


「もうこんな時間だしさ。鈴はお風呂に入りなよ」


「確かに。入らないとね。でも先に星音か舞が入ってもいいんだよ?」


「いや、大丈夫ですよ。鈴がこの家の住人なんですから優先して入るべきです」


「舞の言うとおりだと、私も思います」


 そういって星音と舞が私に風呂に入るよう誘導してきた。いつもは二人とも先に入りたがるくせに今日は何の心変わりだろう。


「あ、そういえば弟くんはもう入ってたのかな?」


「いや、まだ連絡ないし入ってないと思うけど…それがどうかしたの?」


「ううん、別になんでも?」


「それならいいけど。じゃあ、私は風呂に入ってくるね。星音と舞は部屋から出ないようにね。奏斗とすれ違っちゃうかもしれないから」


 私は二人のそう告げると部屋のクローゼットからパジャマセットを取り出して、私を部屋を出た。


 そしてそのまま浴室に向かう…前に奏斗の部屋に前に立つと弟にこう言った。


「私、今からお風呂に入るね」


「りょーかい」


「奏斗は今日は最後に入ってね?」


「はーい」


 さすがは私の弟。物分かりがよくて助かるなー。

 お姉ちゃんとして鼻が高いよ。


 じゃあ、私はお風呂にはーいろ。







 ◇


「はーい」


 わざわざ俺に言いに来なくてもラインしてくれればいいのに、姉さんは慎重だな。それも姉さんのいいところであるから文句を言うつもりはないが。


 俺が自室でどう時間を潰すのかと言えば、漫画やラノベ鑑賞だ。俺は物心つく前から父さんの影響で漫画を読めはじめ、中学二年生になるころにはラノベにも手を出し始めた。


 特に異世界ファンタジー系の作品が好きで、たまにラブコメ作品をたしなむ程度。

 基本、ファンタジーものにも少なからずラブコメ要素は含まれているので時々読むくらいでちょうどいいのだ。


 そして今、一冊ラノベを読み終わり次の作品を読み始めようとしたとき…。


 コンコン、とノック音が鳴った。

 姉さんだろうか。

 それにしては早すぎる気もするが。


「あ、奏斗くん?ちょっといいかな?」


 この声は星音さんか?

 星音さんが一人で俺に部屋に来るとは何事だろうか。

 悪い人ではないから、変な心配はしていないが。


「どうぞー。姉さんはいいんですかー?」


「鈴はまだ入浴中だよー、ってことで失礼するね」


 と言って星音さんは俺の部屋の扉を開けて、入室してきた。


「学校ぶりだね。奏斗くん」


「そうですね。星音さん」


 星音さんは金髪でボブヘアーをしているギャルだ。きりっとした目元からは想像できないほどに穏やかな性格をしている俺の優しい先輩である。


「舞さんはどうしたんですか?」


「舞は今、鈴の部屋でなにかしてるんじゃないかな」


 なんで疑問形なんだ?さっきまで一緒に居たんじゃないのか?

 まぁ俺には関係ないことか。

 姉さんたち三人は学校内で有名な三人組で、よく話の内容に上がる。

 彼氏はいるのかやら、処女なのかやら…etc.


「そうなんですね!それで星音さんは一体何の用で?」


「それはね…」


 俺がそういった瞬間、星音さんは視線を泳がせて焦点が定まっておらず目からハイライトが消えたような気がした。

 少し怖いな…。


 俺は無意識に彼女から少し距離を取った。


「私、実はね…」


 ごくりと息をのむ。


「奏斗くんのことを愛してるんだ!」


 そして勢いよく抱き着いてきた。すごく強い力で俺の身動きが封じられる。


「ちょ、星音さん苦しいです」


「もうはなさないよ。今まで散々鈴に邪魔されてきてさ。私もう我慢が出来そうにないの。だからさ、奏斗くん。私と一緒に住も?不自由一つなく鈴に束縛されることもなくただただ正しい生活が待ってるんだよ?」


「俺は姉さんに束縛されているなんて思ったことなんてありませんよ。姉さんは優しい人です」


「じゃあ奏斗くんが築いてないだけだよ?なにか心当たりはないの?奏斗くんの周りの女の子がいつの間にか…しちゃったとか」


「ないですね。俺には仲が良いと言える異性の友人なんていませんし」


「そうなんだ。じゃあいいけど」


 一体星音さんはどうしてしまったんだろう。

 今まで見てきた星音さんとは明らかには違う、何か黒いオーラを放っているように見えた。


 その時…


「すみません奏斗くん。星音を見ませんでしたか…って星音?何をしているんですか?!」


「あちゃー。舞も来ちゃったかー」


 星音さんを探しに来た舞さんは顔を歪め、張本人である星音さんは舞さんの姿を見て俺に抱き着いたまま頭を抱えた。


「早く奏斗くんから離れてください」


 と舞さんが星音さんに語り掛けるも。


「そうですか。星音は約束を破ったんですね。それなら仕方がありませんよね。あなたが悪いんですから」


 そうして突然、二人が口論を始めた。罵詈雑言なんて柔い言葉では表現できないほどの相手をひどく罵倒する言葉のキャッチボールが俺の部屋で繰り広げられ、俺はその光景を見て頭痛がした。


 そして数分後…


「何してるの…二人とも?」


 部屋の扉の前には目をどす黒く染めた姉さんが立っていた。





 ーーーーーーーーーーーーーー



 ヤンデレ作品を書いてみました。文章が拙いのは少し目をつぶっていただけると幸いです。

 この話は一話目ですので少し長めですが、次話からは少なくなる予定です。


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