第30話 地獄のガチャ配信の始まり!?

【もうすぐ五万人】みんなありがとう!【リスナー様大感謝スペシャル!】


「こんばんは! マレ熊です。皆さんの応援のおかげで当チャンネルも登録者数五万人が近づいてきました。そこで今日は感謝の気持ちを込めてちょっと特別な配信を企画してみました。マレ熊の気持ちぜひぜひ受け取ってください!」


シベチャチャ:おー今日のマレ熊は気合入ってんな

クッチャマ:立派になったな、マレ熊……初配信から見続けた甲斐があった


「えーと、ではさっそく企画の説明をしますね。まずは左上にある数字メーターをご覧ください」

 画面左上にはいつもの配信画面にはない数字が表示されている。現在は48,000となっていた。

「これは現在のマレ熊チャンネル登録者数です。今日は登録者数が五万人いくか、これから発表する目標を達成するまで配信し続ける耐久配信を行います」


クッチャマ:五万人まで残り二千人か。マレ熊ならできる!

シベチャチャ:実質五万人記念配信になりそうだな

コメント:今日はゲームなし? トークのみ?


「いやいやゲームはもちろんしますよ。今日やるゲームはこれです!」

 配信画面にゲーム画面が映し出された。十数人の個性豊かな女の子が並んでいる。みなドレスを着た美少女ばかりだ。


「株式会社SouSakuさんの「アンティークガールズ」! アンティークドレスを着た可愛い女の子がたくさん出てくるそうです。リスナーさんからわたしにぴったりのゲームがあると熱いオススメを頂きました」


コメント:おー「アンティークガールズ」ね!

クッチャマ:新作ソシャゲの中で一番の注目株。いいところに目をつけますな~

コメント:美少女ゲーだから男向けと思いがちだけど、女性向けに作ってるらしい。珍しいよね

コメント:てかマレ熊ソシャゲもやるんだ、なんか意外


「実はマレ熊、今日が初ソシャゲです。だから今日の配信のために少し予習してきたんだけど、ソシャゲってすごいんだね! マレ熊の中では無料でできるゲームっていう認識が強かったんだけど、グラフィックは綺麗だしバトルとかストーリーの部分も充実してるし! これはみんなやるだろうなとマレ熊は開眼しました」


コメント:おーソシャゲの良さに気付いたか。どんどん色んなソシャゲに挑戦してみてくれ。ちなみに自分のオススメは○○で……

コメント:××もよいぞ

シベチャチャ:で今日はこのゲームでなんか耐久配信するんだろ? ゲームクリアまでやるとか?

クッチャマ:アンティークガールズは配信されたばかりだから、ストーリーもまだそんなに実装されてないし、バトル部分で手間取ったとしても二、三時間もあればクリアできちゃうと思うが……。


「このゲームで耐久配信は正解! ストーリークリア耐久は不正解! みんなソシャゲといえば何が思い浮かぶ?」


コメント:うーん、魅力的なキャラクターが多い?

コメント:課金! ガチャ!

コメント:確かにガチャのイメージ強いわ


「はい、大正解! ソシャゲの魅力の一つ、ガチャ! 今回はみんな大好きガチャで耐久配信を行いたいと思います。目指すは……今実装されているキャラのSSR全て出します! 五万人達成するかガチャで全員出すまで配信続けたいと思います」


コメント:まって、SSR全部って言った?

コメント:なんか数名お目当てのキャラを、とかじゃなくて? 実装キャラって確か二十人ぐらいだっけ?

クッチャマ:SSR二十人はマジどんだけ課金してもそろうかわからんぞ! 破産する気か、マレ熊!


「無茶なガチャこそやる意味がある。なぜなら今日みんなにお送りしたいのは、マレ熊が爆死するところなんです」


クッチャマ:爆死は狙ってするもんじゃねー!

シベチャチャ:ソシャゲ初心者が何でいきなりこんな攻めた配信するんだよ


「色々人気の動画を調べてマレ熊なりに考えた結論です。リスナーは配信者がガチャで爆死するのが大好きだって! なのでマレ熊の今までため込んだお金をつぎ込んでみんなに見事な爆死をお届けしたいと思います!」


コメント:爆死が好き……。否定できない自分がいる

コメント:自分の爆死大嫌い。人の爆死メシウマ

クッチャマ:推しには爆死の苦しみ味わせたくない。考え直せ


「クッチャマさん、心配してくれてありがとう。でもこれがわたしなりに考えた、マレ熊の記念配信なんです。マレ熊の覚悟見守っててください!」


クッチャマ:マレ熊~お前のちょっとずれてるところ、推しポイントだけどまさかこんなことになるなんて……


「では、ガチャを回すための石ですが、まずは新規で始める人に特典でもらえる「今から始めると百連プレゼント」の石を使って、ガチャしていきたいと思います」


コメント:百連でどの程度でるかねーとりあえず天井で一体は確定?

コメント:いや、このゲームは無償の石には天井なし。課金した有償石のみ百連でSSR確定だよ

コメント:マジか。おれのやってるソシャゲよりガチャは渋いかも


「それでは先は長いので、さっそく回します。どんな感じなのかなぁ、楽しみ!」

 マレ熊はポン、ポン、と画面をタッチした。

「この十連ってやつを回せばいいかな? SR一枚確定でお得!」

 それは大抵のソシャゲに実装されているシステムなのだが、マレ熊は上機嫌に開始ボタンを押した。

 画面がパッと切り替わって、古びた部屋の中を光の粒が進んでいく。やがて光の粒は一台の机の前にたどり着いた。

 花と宝石の文様が刻み込まれた飴色の机の引き出しがアップになる。ゆっくりと引き出しが開いて、中から十筋の光線があふれ出してきた。パァと画面が白く染まり、一筋の光が少女のシルエットに変わる。声が流れ出した。


『あたし、シロツメクサ。つまりは雑草……てこと』


 不貞腐れた感じではあるが可憐なボイスが流れる。そこには白いシンプルなドレスワンピースを着た黒髪ボブの美少女がいた。

「最初のSRきた! シロツメクサちゃん、ようこそ~! 白ワンピ清楚で可愛い!」


コメント:お、主人公きたじゃん

コメント:ストーリーほぼこの子視点だもんな

クッチャマ:設定では地味な子らしいが、普通に美少女。まぁ二次元あるあるですな


 その後は演出は起きず、次々と同じ制服を着た様々な美少女の立ち絵が現れて最初の十連は終了した。どうやらSR以上でないと演出はないらしい。

「制服の女の子はRカードだね。色んな子がいたから、ぜひSSR出して声が聞きたいところ。とりあえず、無事SRが一人きてくれました~」


コメント:うぅ、それって最低保障てやつなんだが

コメント:出だしは悪いな。こっからは上がっていくだけだ、ファイト!


「うん、頑張る! では二十連目いっきまーす!」

 画面がガチャ演出画面に切り替わって、一筋の光が少女のシルエットに変わる。


『わたくしこそが全乙女の憧れ、ダイアモンド。大事になさってね』


 マリーアントワネットのような豪奢なドレスを着た、見事な金髪巻き髪の美少女が現れた。

「SR二人目はダイアモンドちゃん、ようこそ! まさにダイアモンドって感じの豪華美少女だぁ」

 次の演出が始まって現れたのは、バラ色の髪の無表情な美少女。


『……………………』


 

「ありゃ、何もしゃべらないパターンもあるんだ。名前は薔薇っていう子みたいだね。無言なのが逆に気になる……!」

 最後のSRは紫色のドレスに、ドレスと同じ紫色の髪の悲し気な美少女。


『私、ワスレナグサ……私を忘れないで……どうかあなたの心の中に……』


「四人目はワスレナグサちゃん。なんか悲しそうでストーリーが気になります。そういえばキャラクターの名前は花か宝石の名前からとられてるんだよね。そこも何かお話に関わってくるのかな?」


コメント:ダイアモンドと薔薇はどっちも看板キャラだな

コメント:ワスレナグサちゃん、可愛い~

クッチャマ:ワスレナグサは人気トップクラス。看板キャラと人気キャラが一気に来てくれたのは嬉しいな

コメント:よーし、運が向いてきたぞ


 三十連、四十連とガチャを回していく。SRはコンスタントに二~三枚出てきて、新しいキャラが増えていく。しかしSSRが出る気配はない。チャット欄は次第に焦るコメントが増えていった。


コメント:次で五回目か。そろそろ一枚ぐらいSSRきてもいいはずだな

コメント:オレが普段やってるガチャなら百連でSSR三枚が平均だから、単純計算で七百連でSSR二十一枚。百連一回するのに三万課金するから三×七で……

コメント:あと残り五十連で三枚もくるかなー


 五十連目も六十連目も七十連目も出てくるのはSRのみ。チャット欄はどんどん焦りを増していく。反してマレ熊は能天気だ。

「どんどん可愛い女の子増えてくねぇ。みんな推しはできましたか~?」


コメント:胃が痛くてマジそんな気持ちで画面見れん

コメント:配信者よりリスナーの方がSSR求めてる


「では、八十連目~。あ、シロツメクサちゃん二枚目だ」

「九十連目。ワスレナグサちゃんと、お、シロツメクサちゃんよく来るね。これで三枚目だよ~なかなか新しい子が来ないねぇ」


コメント:あぁー次で無償分が終わる

コメント:今の成果は?

コメント:SR来たキャラは十三人だな。Rのみが七人

コメント:頼む、最後の十連でせめて一人ぐらいSSR来てくれ!


「次で無償石は最後、百連目になりまーす」

 チャット欄の必死さとは逆に鼻歌交じりでマレ熊がガチャのボタンをタッチする。演出が始まり、リスナー達はみなSSR確定演出が始まることを願った。光の筋が女の子の形をとる。


『あたし、シロツメクサ。つまりは雑草……てこと』

 聞きなれたボイス。四枚目の被りカード。チャット欄が絶叫で埋め尽くされる。しかもSRは一枚のみ。最低保障だ。


コメント:グロイ……この画面グロすぎる

コメント:結局一枚もSSRは来なかったか……まだ無課金といえ先が思いやられる

クッチャマ:おい、今配信見ててチャンネル登録してないやつ、今すぐ登録するんだ! 五万人達成してマレ熊を救うんだ!


「チャット欄盛り上がっててるねぇ。爆死の気配がしてまいりました! 

では、ついに課金します……はい、次の百連分の石購入しました。さてと、みんなー本番はこっからだよ!」










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