憑依 ー もう、あの頃には戻れないのなら ー
画面が付き、椅子に座った
「体調不良という理由で1週間ほど学校を休んでから『何もなかった。全て悪い夢だった』と自分に言い聞かせて、学校に行きました」
淡々と語る
「1週間も休んでいましたので、仲の良い友達から心配されましたが、私が『大丈夫』と伝えると何事もなかったように、日々の生活が始まりました」
そこまで話してから
「でもね駄目なんですよ、思い出しちゃうんです、あの夜の事。忘れよう、忘れようと何度思っても、まるで生け贄の烙印のように……目を瞑ると必ず」
「何日もまともに眠れない日々が続いて、味覚障害も重なって、私の体重はどんどん減っていきました」
「母親にも心配されて『無理にでも食べなさい』と色々な料理を作ってもらったんですが、何の味もしない料理を食べる事がどうしても出来なくて……食事はウィダーinゼリーとビタミン剤だけになりました」
「母と一緒に心療内科で不眠症の相談をしましたが、睡眠導入剤を処方されるだけで、症状は何も変わりませんでした」
…………
「ある日、親友の
画面が切り替わり、小動物を連想させる可愛らしい感じの女の子が画面に映る。
「
あ~~ん、パクリ。
「タコさんウインナーは、何の味もしませんでしたが、
「よかった」と笑顔の
「それでさ、ほら前に話してたサッカー部の
「菅谷君は
「
「私は涙が止まりませんでした……」
そこで画面が消える。
…………
1分ほどしてから画面が付き、椅子に座った
「……違うんです……あの時、私の心に宿った感情は、どうしようもない苛立ちでした」
「だってそうじゃないですか、私は獣のような男たちに無理やり犯されて、食べ物の味が分からなくなって、眠れなくなって、なんで私だけって思っちゃうじゃないですか、それってそんなにおかしいですか?」
「わたし何か悪い事しましたか、こんな酷い目に合うような事なにかしましたか……わたし……わたし……あのとき無意識の内に思ったんですよ。
「最低ですよ、
号泣する
「わたし気付いちゃったんです……あの夜。あいつらに犯されたあの夜。身体と一緒に心の中まで穢されたって事に、もうあの頃の私には……何があっても絶対に戻れないんだって事に」
「それに気付いたら、涙が止まりませんでした」
「もう、あの頃には戻れないのなら……それならもう……死ぬしかないじゃないですか」
…………
僕も涙が止まらなかった。
泣けると話題の映画を観ても、ほとんど泣いた事がなかったのに。
…………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます