インスタグラムで壁打ちを

明鏡止水

第1話 縁切りして東京で会おう

 仲の良い友達がいた。

そう、友達がいたんだ。

その友達は月に三十九万、派遣で稼いでる。早朝から深夜までPCに向かっている。

 私は彼女に多くの相談をした。

上京したいから夜の店で働こうか。

 親に反対された。

 友人はたいへんな世界だけど慣れれば天国だよね、と返してくれた。

 そう。

返信してくれたんだ。それなのに、最近どっか行った?とメッセージを打つと。

 返ってこなかった。

 天気の話でもすれば良かったか。

 銭ゲバの話が呆れさせてしまったか。

連投がしつこかったのかもしれない。なぜなら返事が来ないから。

 私と彼女を繋ぐものは他にない。

 彼女とは中学生の時からの仲だ。

 私は彼女に病気の事、不登校の事、性的な初体験の事まで全て相談した。

 一方、彼女はお金を払って、恋愛アドバイザーに話を聞いてもらうらしい。

 脱毛もしていて陰毛がくるんとまるく可愛いのだ。彼女に比べれば私は茂み。

「これは切った方がいいですね」

好きでもない相手に脱毛もできないと伝えてあったのに下の毛の事を言われて私は咄嗟に

「切っちゃうとチクチクしちゃいますよ?」

と強がって見せた。

彼女は上京して一人と一匹で頑張っている。

どうして、東京でチョコミントのジェラートを一緒に食べる相手が私ではないのだろう。

東京タラレバ娘みたいに提灯のかかった飲み屋でレバ刺しとタラの白子ポン酢で飲んでみたい。

 私、人生やりたい事いろいろあるので。

いろいろあるの。

 今人の健康や老後について学んでいる。

人は二十代から三十代で、もう老化が始まっているらしい。加齢をすることが老化なんじゃない。ただ、生理的老化はあるのだ。

 人は老化すると顔が伸びる。たるみもある。

どおりで最近マスクの位置が気になるわけだ。

 私と貴女の関係も老化して、心肺機能は衰え、筋力は低下してしまったの?

 私はね、いまハローワークで申し込んでハロートレーニングしている。朝起きれなくて、夜勤明けの父に起こしてもらうの。

 相変わらず、おばさんみたいな服着てるよ。

 お金、かけられないからね。

毎日着られる服を買うので精一杯。

今年もワンピース欲しかったな。すね毛がひどいけど。 

 ねえ。どうしてメッセージ返してくれないの?

忙しい?私のこと、だいぶ前から嫌になっちゃった?

既読はついてると思うんだよね。

ねえ。もしも願いが叶うなら。

東京で会おう。

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