<ペストマスク>ハロウィンパーティー

 そうこうしているうちに、街はハロウィンの仮装の人々で溢れてくる。

 黒鉄美里たち三人も今日はハロウィンを楽しみながら街を歩いている。

 例の<ペストマスク>の仮装の人間も美里たちの周りにもチラホラ見えてきていた。

 

「あのペストマスクって、やっぱり、不気味ね」


 怖がりの薫が嫌そうな顔をしている。


「あのペストマスクを発明したのはフランス人の高名な医師で<シャルル・ド・ロルム>という人物らしいよ。彼はアンリ4世、ルイ13世、ルイ14世の主治医も務めた優秀な医師だったし、特徴的な鳥のくちばしマスクには中にハーブが入っていて、感染予防効果もあったとかなかったとか」


 涼介がまたネット情報からの受け売りの解説をする。


「皮の帽子にオーバーコート、手に<木の丈>を持って患者を触れずに診察するんでしょう? ほとんど黒魔術師みたいな不気味なビジュアルだけどね」


 美里もあまり好感が持てない仮装である。


「あれ、何かおかしくない?」


 その時、薫が異変に気づいた。

 いつのまにか、周りが黒い<ペストマスク>の仮装の人間ばかりになっていたのだ。


「ちょっと、怖いよ」


 美里も少し不気味さを感じていた。

 だが、<ペストマスク>の仮装の人間は無言であり、これといって危害を加えてくる訳ではない。

 ただ横を歩いているだけだが。


「うん、ちょっと、怖いな」


 涼介も額に嫌な汗が浮かんでいた。


「大丈夫だ。落ち着け」


 飛騨先生が右に現れた。


「うん、安心して」


 左側にはシスターベアトリスがいる。


「1、2、3で飛ぶから大丈夫。みんなしっかり手を繋いで」


 シスターベアトリスがそう言った。


「1、2、3!」


 五人の姿は一瞬で消え去った。


「どういうこと?」


 次に美里に見えたのは青空と雲だった。

 五人は空に浮かんでいた。

 そして、眼下から<ペストマスク>姿の、かつて人間であった物が数十羽高速で接近して来ていた。

 まるで黒い怪鳥のように見える。


「おいおい、今回は空中戦になるのかな」


 飛騨先生が空中浮遊しながら嫌な顔をした。


「そのようね」


 シスターベアトリスも空中浮遊しながら呟いた。

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パンデミック・チルドレン 坂崎文明 @s_f

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