第3話 ポストアポカリプス世界⑧
【――――リザルトを開始します】
【試練の達成。三つの世界全てで交戦した。最大同時召喚数を四枠から五枠に拡張】
【カルマを計測。計108カルマを獲得。……未変換の魔石を確認。魔石をカルマへと変換しますか?】
あれからAEMと遭遇することも無く無事にシェルターへと戻り、帰還門を通ると、いつものリザルドの声が聞こえてきた。
「お、試練の達成だ。結構カルマもあるな」
この世界で倒した敵は、ガンハウンドのみで、数は十二体。一体当たり9ポイントか。
ゾンビが1~2カルマなことを考えると、まぁまぁなのではないだろうか。
「さて、と。じゃあ、カード強化をするか」
まずは、ティアさんからだ。
カード強化から、上級収納スキルを選択する。
【上級収納:物を収納できる内部空間を持つ。上級は体育館程度の広さ】
【このスキルの取得には22458カルマを消費します。取得しますか?】
【はい】【いいえ】
「に、二万……」
めちゃくちゃ高いな……。
収納スキルって結構レアスキルなのだろうか?
とりあえず、取得はせずにアイギスの方を見てみる。
「低級で2000、中級で10000、上級で50000かぁ……」
ティアさんの上級収納が二万程度で済むのは、あれでも割引が効いていたらしい。
さらに言えば、僕は強化ポイントが半額とかいう特典があるので、本来はこの二倍は必要ということだ。
「どうしようか……」
僕の所持カルマは、28535。上級収納スキルを取ると、ほとんどのカルマがぶっ飛んでしまう。
元々カルマは姉ちゃんの強化のためというのもあり、全部そのほとんどを使ってしまうのには抵抗がある。
が、収納スキルは、これまでも家事魔法や豊饒之角と並んで助けられたスキル。
効果も体育館並と、これを取れれば当分は容量に悩まされることもないだろう。
悩ましい……実に悩ましい……。
「ショウ、悩んでいるのであれば、とりあえずアイギスに低級収納だけでも取らせるのはどうでしょうか?」
「どうして?」
低級収納は押し入れ程度の容量と、大して役に立たないと思うのだが……。
それなら、いっそティアさんの収納スキルを上級にランクアップさせた方が良いだろう。
「まず、私の収納スキルに関してですが、どうやら熟練度が割と溜まっているようです。このまま使い込んでいけば、さらなるカルマの消費軽減や自力での取得も不可能ではないでしょう」
確かに、ティアさんの上級収納スキルのカルマはかなり割引が効いているように見える。
「そして私には教導という自信が持つスキルを他のカードに教えるスキルがあります。これでアイギスに中級収納スキルを教導すれば、私の熟練度を稼ぎつつ、アイギスに中級収納スキルを取得させることが可能かと。幸い、アイギスの収納スキルの適性はそれなりに高いようですし」
教導……そんなスキルもあったな、と思い出す。
「でも、それなら低級収納スキルを教導で覚えさせれば良いんじゃないの?」
「スキルは大きく分けて、取得の方が時間がかかるタイプと、成長させる方が時間がかかるタイプがあります。収納スキルは、典型的な前者。教導で低級収納を覚えさせるのと、低級収納を中級収納にランクアップさせるのでは、おそらく掛かる期間はそれほど変わらないかと」
「え? そうなの?」
ポイント的に、低級収納の習得の方が簡単そうに見えるのに。
「カード強化のシステムは、純粋に必要とする熟練度だけでポイントを決めているようです。ですが、収納スキルのような特殊なスキルの場合は、初等のスキルを取得させてから成長させた方がカルマの節約になるかと。逆に武術などの技術系のスキルは、習得は比較的容易く成長は時間がかかる傾向がありますね」
なるほど、と頷く。
確かに武術スキルを習得するイメージは僕にも出来るが、収納スキルとかはどう取得したら良いかも想像できないもんな。
逆に、一度習得したら収納スキルは使いこんでいけば勝手に成長して、武術スキルの方は武の真髄的な物を理解しないと成長しないイメージがある。
「というわけで、最初にアイギスに低級収納スキルを取得させてしまいましょう。低級収納でもガンハウンドなら一体くらいは収納できるでしょうし」
「わかった」
僕は頷くと、アイギスへと低級収納スキルを取得させた。
『ッ!? これは……』
すると、それまで黙って成り行きを見守っていたアイギス(inガンハウンド)が戸惑いの声を上げる。
「どうかした?」
『い、いえ、急に知らない機能が追加され、戸惑っただけです。その、我々電子精霊は、学習こそすれど、生まれた時の性能から成長も劣化もしませんので……』
「ああ……」
確かに、SF的な世界出身のアイギスからしたら、こんなファンタジー的な方法でいきなりスキルが与えられたら戸惑って当然か。
その上、新しく得たスキルは、収納スキルとかいう魔法みたいなヤツだし、なおさら戸惑いは大きいだろう。
……まぁ、僕から見たらアイギスの世界の科学技術は、十分に魔法というかファンタジーのレベルなんだけどね。
『しかし、これは実に興味深い。解析のし甲斐がある。……ああっ、もっと演算能力の高い機体ならば!』
アイギスはそう言うと、何かに没頭するように黙り込んでしまった。
「えーと、アイギスは放っておくとして、他に何か取得した方が良いスキルとかあるかな?」
「特に思い浮かばないのであれば、今は良いのではないでしょうか? 必要となった時に取得すれば良いかと。幸い、ファンタジー世界と異なり、いつでも帰還できる状況なわけですし」
「そうだね」
まだ夢乃さんや生徒会長さんの輸送も待っていることだし、さっさと出るとするか。
僕は頷き返すと、この狭間の空間を出たのだった。
【Tips】教導スキル
自分の経験を対象へと伝えるスキル。
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやることで、対象のスキル熟練度を高めることが出来る。
教導する自身スキルの熟練度が高いほど、教導の効率が上がる。
性質上、実際にさせてみせることが出来る技術系のスキルの方が習得させやすい。
同時に複数人を指導することも出来るが、その場合は効率が格段に落ちる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます