第3話 ポストアポカリプス世界⑨




「おかえり、ショウくん」


 門から出ると、生徒会長さんたちに出迎えられた。

 それに頷き返しつつ、軽く周囲を見渡して問いかける。

 

「ただいまです……ブーディア姫は? まだ来てませんか?」


 一緒に門を通ったというのに、ブーディア姫の姿は無い。

 カード強化をしていた分、僕の方が後から出ると思っていたのだが……ブーディア姫も何かカード強化を試しているのだろうか?


「ブーディア姫には、悪いがすぐにシェルターに戻ってもらった。ショウくんがいないのに、君の召喚獣扱いのブーディア姫が他の生徒に見られると面倒だからな」

「ああ、なるほど」


 と僕が頷いていると、今度は生徒会長さんがアイギスへと目を向けて問いかけてくる。


「ところで、そこの金属の狼は?」

「ああ、ポストアポカリプス世界で得た新しい仲間です」


 僕はポストアポカリプス世界についてわかったことを簡単に説明した。

 エントロピー機関とかのどれだけポストアポカリプス世界が進歩していたかの説明は、今は不要なので省きつつ、「なんか良くわからない技術で生み出されたSF的モンスターがいるみたいです」という感じにAEMやDEMなどの身近な危険を中心に説明する。

 ついでに、もしかしたら金属に反応して襲ってくるのかも、とも。


「……ふむ、そのAEMやDEMの方はどれくらいの強さなのかわかるか?」

「このガンハウンドに関しては二ツ星下位クラスって感じですね。ただし数体の群れで掛かってきます。DEMに関しては、わかりません」

「二ツ星クラスの群れか……織田はともかく、同行した調査隊のメンバーにとっては脅威だな」


 ……そう言えば、織田さんだけじゃなく他の調査隊のメンバーや織田さんの友達も一緒に行ったんだったか。


「AEMとやらが金属に反応して襲ってくるという話が確かなら、調査隊のメンバーは全員AEMに襲われた可能性が高いな」

「全員? みんなキャンピングカーで行ったんですか? 織田さんも?」


 他のメンバーはともかく、織田さんにはデュラハンの馬車がある。

 移動手段としてはデュラハンの馬車の方が上のはずだが……。


「ああ。移動手段というより、ホテル代わりとしてな。キャンピングカーにはシャワーやキッチン、ベッドもついているしな」


 なるほど、と納得する。

 僕自身、ファンタジー世界では車というよりホテル代わりとして使っていたしな。

 送り狼のスキルが無い以上、シェルター探しが長期戦になるのは確実。それを見越して一人一人キャンピングカーを持ち込むのは当然の流れか。

 そして、ティアさんのような収納スキルが無い織田さんは、馬車があってもキャンピングカーに乗って移動せざるを得ない。

 その最中に、僕の時のようにAEMに襲われたのだろう。

 食料や水をキャンピングカーに積んでいたのなら、キャンピングカーを捨てるのも難しい。

 次から次へと襲ってくるAEMに追われる形でシェルターからどんどん離れていったのかもしれない。

 ……あるいは、シェルターよりもわかりやすいシンボルを見つけ、そちらに向かったか。

 あの辺に、シェルター以外に人が集まりそうなところはあるのだろうか?

 僕は、アイギスへと問いかけた。


「ねえ、アイギス。シェルターの周辺に何か目立ちそうなところってある? はぐれた仲間がそこに向かったかもしれないんだけど」


 僕の問いに、アイギスは少し考え。


『……私もシェルターの周辺が今どうなっているのかは詳しくないのですが、アレならば建物の性質上残っている可能性が高いでしょう。お探しの方々は、もしかすると、そちらに向かったのかもしれません』

「そこって?」

『………………………………』


 が、そこで何故かアイギスは沈黙してしまう。


「アイギス?」

『……もし、お探しの方がそちらに向かわれたのだとすれば、近づかない方が良いかと』

「……どうして?」


 嫌な予感を覚えつつも、問い返す。


『危険だからです。近づくだけでルーラーも拘束され、二度と戻ってこれなくなる恐れがあります』


 二度と戻って来れないって……なんだ、それ。

 僕は恐る恐る問いかけた。


「そこは、一体?」



『――――第七タルタロス刑務所。この州最大の刑務所です』 










 






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