平和な世界が実現されるとしたら

弥彦乃詩

短編

世界は平和だ。


太古より人間は争いを繰り返してきた。

限られた資源を、広大な大地を、他人の持つものを、自身の信ずる神を求め。


しかし現在は、

他人から奪い合うこともなければ、

自身の信ずるもので争うこともない。

飢えや貧困もない。

人口が増えすぎたり減りすぎたりすることもなく、

汚職もなく、

事件は直ちに正義により解決され、

日々は平和に過ぎていく。


そんな平和な未来の話。






僕の目の前で正義は言う。

「もう君たちを害す悪は俺という正義が殺してやった。

これからは安心して生活できるぜ」


僕は正義に満面の笑みで微笑んだ。

「ありがとう!これでようやく全部の条件を達成できたよ」

「え――――」


どこか非現実的な乾いた音が鳴り響いた。

信じられないといった顔をした正義は足から崩れ落ちた。

万事が上手くいったことに安堵した。


本当に。




世界は理不尽だ。

圧倒的な強者による支配によって戦争もなければ、

世界の思想が統一され自分の信ずるものはどこかへ消えた。

人間が最低限生活可能な衣食住の配給により飢えや貧困もない。

食事に含有された薬により人口が増えすぎたり減りすぎたりすることもなく、

相互監視社会により汚職もなく、

事件は直ちに正義暴力により解決され、

日々は平和に過ぎていく。


そんな制限だらけの平和を押し付けてくる。

それは本当に正しい事なのだろうか。


そのようなことは認めたくない。

いや認めない。そんな平和は……。


――あとがき―――――――――――――――――――――――――――――――

いつ書いたかも思い出せない作品

テキストでのみ残っていた。

視点によっては世界の見方変わるよねーみたいなお題で書いたはず

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平和な世界が実現されるとしたら 弥彦乃詩 @ynoshi010

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