第8話 罪な者


 とある彼は部屋の椅子に座りスマホを操作しながらハァーと息を吐く。


 「僕はなんて罪な男なんだ…」


 画面に映し出すのは大勢の女性からのメッセージの通知音がひっきりなしに鳴る。


 「今日逢える?ご飯奢るよ!」

 「今日デートしない?ブランド品を買ってあげるからさ~」

 「今日オシャレなBARで飲みに行かない~?お金は気にしなくて良いから」


 こんな具合で彼のスマホの画面には女性からの猛アピールが続く。


 「僕は1円も使っていないのに、レディを魅了してしまうんだ…。はぁ~罪な男だな~」


 画面から目を離すと彼は先程、帰宅した際にポストから取り出した大きな封筒を開く。


 「…?これはこの前、レディと朝までコースを共にした写真か。ここまで送るとは…とんだ構ってちゃんだな」


 彼は女性と共に過ごした写真を見つめると、折りたたんだ紙に気付く。


 「ん…?この後ろにある折りたたんだ紙はラブレターか?このご時世に、手紙で愛を伝えるとは…」


 彼は口角をあげ微笑みながら紙を開く。


 「不貞行為により、慰謝料400万を請求する」


 彼は慰謝料を請求され、本当に罪のある男になってしまった。

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