第5話 行動する犬


 「それじゃあ、行ってくるね」


 「く~ん」


 女性は犬の頭を撫でるとリビングのドアを閉め玄関に向い外へ出る。


 (ご主人様、仕事に行っちゃった…)


 犬はご主人様がいなくなり尻尾を下に降ろしシュンとする。部屋に転がるボールで遊び、噛むと鳴るぬいぐるみをプピプピと連呼する。しかし、犬にとってご主人様が不在となった今しかできない行動を実行する。


 (確かテーブルの上に…)


 テーブルの上にある、うすしお味と書かれた袋に向かいジャンプし咥える。鋭い歯で袋を破るとパリパリと音を出しながら頬張る。


 (ふう。美味しかった!)


 食べ終えた犬はゴミ箱の一番下にあるレバーを踏み、開くと袋を捨てる。証拠が無くなり犬は勝ち誇った気分で尻尾をあげ揺らすと眠りに入る。目が覚めると、丁度カチャと玄関の開く音が聞こえ、ドアの前でご主人様を迎える。


 「ただいま~!いいこにしてたね」


 「ワンワン!」


 勝ち誇った犬は尻尾をあげながら吠える。そして、ご飯の器の前で待機している時だった。


 「あっ!ゴミ箱の中にお菓子の袋が!食べたね~!」


 ご主人様は空のペットボトルを捨てようとゴミ箱を開け、証拠は早々に見つかる。その後、ドックフードは普段より少なめだった。

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