一億総オタク社会の現役JK社長
荒浜ルビオ
プロローグ
「偉大で栄光に満ちた国民オタク主義共和党万歳!」
一人の美少女が演説の最後をそう締めくくると、聴衆から大歓声が上がる。彼女の名前は、海野沙輝。齢十八にして、世界最大のオタク企業のトップを務める現役JK社長。先日の党大会からは、国民オタク主義共和党の最高評議会常務委員も兼任している。
演説後のパレードでは、名作アニメの巨大な肖像画が、山車に載せられて次々と流れてくる。それらが一通りお披露目されると、今度は肖像画が党幹部たちのものに切り替わる。海野のものが登場すると、ひときわ大きな歓声が党員たちから沸き起こった。
広場に詰めかけた党員はおよそ百万人。彼らの上げる地鳴りのような大歓声に対し、彼女は凛とした表情でゆっくりと手を振る。テレビの画面越しでもわかる、可憐な美貌。そんな彼女だが、俺――朝比奈春斗にとっては上司であり、同級生であり、そして特別な存在。その先は脳内で言語化するのさえ正直恥ずかしいので、ここでは自重しておく。何にせよ、俺はこの聴衆の中、いや、この世界の中で、最も彼女に近い存在なのだ。
今思えば、彼女との出会いは偶然の産物以外の何物でもなかった。今でこそだいぶ慣れたものの、出会った当初はあまりの可愛さにキョドってしまい、色々と苦労したものだ。
そんな風に過去を懐かしんでいるうちに、一本の電話が鳴る。どうやら、迎えの社用車が到着したらしい。俺はテレビを消すと、支度をするべくゆっくりと立ち上がった。
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