魔女と彼女

@natakaya

いつもの朝。そして実験

 少し遠くから、人々の声が響いてくる。おはようという挨拶の声や、少し急ぎ目でそれに答える声。少し経てばもう少しずつ増えてくるであろう声たちは、今日も朝を告げてくる。

「ふぅ、今日は何かあったかな?」

 いつも通り予定を確認しつつ、寝室である2階から下りれば、ペットでもあるカラスと黒猫──

「おはようございます!」

 だけではなかったようだ。

「?なぜ君がここに?」

 目に入ってきたのはまぶしい笑顔。耳に響くは少し高い少女の声。

 少女は少し不満げな顔をしながら、

「昨日言われたとおりにお手伝いに...」

 少し不貞腐れたように言った。

「あぁ。すまない。忘れていたよ。」

 思い返せば昨日彼女に今日のアシスタントを頼んでおいた気もする。

 今日の実験には少し若めの彼女がぴったりだったから。

「着替えるついでに準備してくるから、少し待っておいてくれるかい?」

「わかりました。」

 着替えをするついでに、今日の実験の工程表を作っておこう。それがあればスムーズに実験も進められる。

 それが終われば材料を探す。と言ってもほとんどは一階にあるので、そこまで時間はかからないだろうが。

「おや?少し昨日よりも減っている気が...」

 気のせいだろうか。材料の一部が昨日よりも減っている気がする。実験の分はあるから別にいいが。

 下へ降り、彼女に工程表を渡す。少し汚い字だったが、彼女は問題なく読めたらしい。

「それでは、実験を始めようか。」

 というと、彼女は少しワクワクしながら、

「はい!」

 と元気に答えた。そういうところは子供っぽくて少しかわいいなと思いつつも、鍋を出し、彼女から材料を受け取る。

 今回作るのは比較的簡単に作れて、かつ効果が強い部類のものだ。間違っても作りすぎてはいけない。それこそ一束分材料が多いだけで、効果は2倍に跳ね上がる。

 彼女に慎重に量を図るように言いつつ、受け取った材料を茹でていく。

 2時間ほど作業すれば、薬も完成だ。

「さて、無事に薬も作れたところで、今日の本題なんだが..」

 彼女に視線を向けつつ、はなす。

「今日作った薬を、君に飲んでほしいんだ。」

 そういうと、彼女は少しおびえるような顔になった後、縦に首を振った。

 返事が返ってこないのは、少し疲れたからだろうか。

「ありがとう。味に関してはそんなにひどいものではないはずだ。一気にグイッと言ってくれ。」

 彼女は薬の入ったコップを持ち、少し逡巡したのちに、一気に飲み干した。

「!意外とおいしいんですねこれ。」

 おいしいものを飲んだからだろうか、少し彼女の疲れが取れてきている気がする。

「そうだろう。なぜおいしくなるかは私にもわからないが。」

 少し経つと、彼女は少し首をかしげながら、

「そういえば、この薬の効果はいつぐらいに出てくるんです?」」

 と聞いてくる。

「効果は大体一時間後に出てくるかな。」

と答えると、彼女は小声で何かをつぶやいた。

「......まずいかも?」

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