明日も、君に会えたら。

結花紡樹-From.nanacya-

明日こそ。

明日こそ、明日こそー。

毎日会ってるのに、「おはよう」が言えない。



コミュ障の私は、みんなが毎日、毎秒のように誰かが言ってる「挨拶」ができない。

みんなが当たり前に言ってる中、私はひとりポツンと席に座っている。


そんな私にも、毎日懲りずに話しかけてくる人がいた。



「おはよっ!」



そう、彼だ。

毎日毎日話しかけてきて、挨拶をする。その後ちょっと話をして自分の席に帰る、という人だ。

何もこりずに話しかけてくる彼の姿を見て、私は惚れた。

だから、その一歩として、毎日言おうとしている。




でも、できない。




残念すぎて、毎日ベッドの上で足をバタバタさせてしまう。

でも、できないものはできない。


だったら、できることからちょっとづつ初めてみよう。



まずは、話していることに相槌を打つ。

彼が話しているときに、とても頑張って、「うんうん」と頷いてみると、


「お!相槌してくれた!」


とはしゃいで喜んだ。

そんな君の笑顔が、やっぱり私の心を掴む。



相槌が打てた日から、今度は言葉を使って相槌を打とうと努力した。


でも、そんな簡単にうまくいくわけにもいかず、相槌だけ打っている日々が続いた。




ある日、彼が話していると

「なぁ、お前はどう思った?」


そうやって問いかけてきたのだ。


私にとっては絶好のチャンス。

ここだ、と思ってちょっぴりの勇気と本気と声帯で


「…いいと思ったよ」



そう、つぶやいた。

呟くことしかできなかった。



「おー!話してくれた!」


また、はしゃいで喜んだ。

その君の笑顔に、また私の心が君の色に染まる。

これ以上染まったら戻れないくらい、染まってしまった。



その日からは、だいぶ色々できるようになってきた。

試行錯誤もしたけど、彼の「おはよう」に返せるようにもなった。




後は、彼がきたら自分から言うだけ。


明日こそ、と思っていてもなかなかできずにいた。



そんなある日、彼がやっぱり話しかけてきた。



「…おはよう」

「なぁなぁ!」


これが同時に響いた。そう、彼は挨拶を抜かしてきたのだ。

私は挨拶をすると思い、いつもと同じタイミングで挨拶をした。



「おー!挨拶もしてくれた!」


また彼がニコニコ顔で、はにかむ。私も思わず笑ってしまった。



それからは、自分からおはようを言えるようにもなった。


彼からの受け身でしかないのは事実だけど、今は、ちょっと成長した私を褒めてみたいと思う。

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