前略、転生した勇者ちゃん、ちゃんと探してます。【凡人に】転生した魔王より

花月夜れん

第1話 中学二年生のある日の魔王

「好きです!! 俺と付き合って下さい!」


 放課後の学校。体育館倉庫の裏、これから帰る連中には無用の場所での告白だ。


「ごめんなさい。好きな人がいるから」


 あまりのショックで気絶しそうになった僕は突然ある事を思い出した。

 前世魔王であった事を――。

 ちなみに断られたのは僕ではなく、通行人A……ではなく、たしかクラスは違うが同学年の男子、忠野望武男ただのもぶおだ。名前のわりに勇気があって告白出来るなんてスゴいやつだと思った。断られてるけれど。だけどよく頑張ったよ。ホント。だって僕には告白する勇気がないからさ。

 そして告白されたが断ったクールで可憐な美少女は僕の幼なじみ。男子の間では可愛いと評判の女子だ。

 本当にたまたま通りかかって、聞いてしまった。大好きな幼なじみの女の子、遊佐真由ゆうさまゆに好きな人がいる事が怖ろしくショックだったのだ。


「誰だよ、好きな人って。まさかクラスのやつか?」


 僕は聞き耳を立て続ける。そうだ、誰だ? まゆの好きな奴は!?


「遠い人……」


 再び僕に衝撃が走る。僕と彼女は幼なじみ。物理的な距離は家の壁2枚分。遠い人なんて明らかに僕じゃないじゃないか。

 わかってたさ。あんな美少女が僕となんてありえないってさ。平凡な僕なんて……、僕なんて……。

 いや、そうじゃん。僕、平凡じゃなかった!!

 さっき思い出したじゃないか。前世魔王であった事を――!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る