20℃ 30℃ どっちが好き?

あしはらあだこ

第1話

 はぁ~、あたしたちって、デリケートよねぇ。

 20℃~30℃じゃないと、生きていけないんだから。

 こいつらも、もうちょっと、あたしたちに、協力するべきよね。

 無駄な抵抗はやめて、とっととさしだせばいいのよ!


 しかも、あたしたち、あかちゃん産んだら、死ぬのよ!

 あたしたち一族の命運は、このひと夏にかかっているのよ!

 さあ、グズグズしていられないわ!

 どんどん狩りに行くわよ!


 まずは、汗のにおいや、お酒の香りを探すの。

 おいしそうなにおいには、絶対についていくわ。

 あら、こちらの方、血気盛んそうな、においがするわ。

 う~ん、でも、できれば、もうすこし若い人が好きなんだけど・・・

 高望みばかりも、していられないわ。

 今日の相手は、アナタで決まり。


 あら、ずいぶん、小さな箱に乗っていくのね。

 いまここで仕掛けると、すぐに気づかれてしまうから、部屋へ着くまで我慢よ!

 そうそう、扉をすこし広めに開けていただけると、ケガなく入れましてよ。

 あら、なかなか、上手な、エスコートでいらっしゃるじゃない。

 ますます魅力的。


 まあ、さっそく脱ぎ始めるなんて、ご協力に感謝。

 そりゃあ、脱いでくれたほうが、シやすいもの。

 あら、お風呂?

 ま、そのほうが油断しているから、ますますチャンス到来よ!


 あぁ~。おいしかった。

 やあーっぱり、あたしって、いいカンしてるわ。

 なかなかの上玉だったわ。ふふふ。


 え?なに?

 このにおい!

 も、もしや・・・

 噂の、かとりぃぬ?!

 そ、それだけはヤメテ!

 ど、どこかに、すきまは?

 ん、もう!これじゃ、にげられやしない!!!

 ああぁ、く、苦しい・・・

 ふらふらして、うまく飛べない・・・

 はぁ、もう意識がなくなりそう・・・

 ごめんね。あかちゃんたち・・・

 ママは、来世で、もっとがんばるからね・・・

 それにしても、あたしの赤ちゃんたちを、「ボウフラ」だなんて、ダサイ名前で呼ばないでくださる?む・むね・・ん・・・


 こうして、彼女たちのひと夏は、おわりをつげる。(ほんとカ?)

                                

                                  おわり





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

20℃ 30℃ どっちが好き? あしはらあだこ @ashiharaadako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ