龍の紋
bakhka
§1-1
「十年か……」
黒龍は自社ビルの最上階にある自分のオフィスから遥か下界を見下ろしながら呟いた。ゆったりとした革張りのソファで寛いていた白龍が鼻で笑う。
「これから先は何をお望みで?」
ふざけた口調で彼に言いながら、磨き上げられたガラステーブルの上にある灰皿にタバコの灰を落とす。
「……そうだな。考えうる全ては手に入れた気がする。ボランティアでもするか」
「ふ……心にもないことを。おまえがボランティアなんて笑っちまうぜ」
「そうか」
ひとつ間を置いて、ふたりは声をあげて笑った。
Bhカンパニー最高幹部であるふたりは、それぞれ黒龍、白龍と呼ばれ恐れられている。現在において最高権力を持つふたりだ。しかしながら、白龍だけは一部を除いてまったくの無名である。
10年前、黒龍であるヒロは、白龍、キラと今現在BH四天王と呼ばれる四人と共にこのBHカンパニーを立ち上げた。その際、ある決め事をした。黒龍は表。白龍は裏。それ故に白龍は表の世界では無名のまま裏の世界に勢力を強めていった。裏を知る人間なら誰もが「死にたくなければ白龍には逆らうな」と言う。
立ち上げる際に、六人は決意と誓いを込めてそれぞれの色の龍を身体に彫り込んだ。今では広く知れ渡っている話だ。白龍以外は。
表向きは男しかいない会社ということになっている。社員として雇われている人間全てが男性である。ただひとり、最高幹部白龍だけが女だった。
なぜ唯一の女性である彼女が白龍として裏を務めることになったのか。彼女の望みは何だろうか。
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