第134話 久々の登場である宇宙娘

 女子AIのツヴァイが操っている4mの巨人は、深堀ふかほりアイたちが分乗している車2台の前で立ち止まった。


 MA(マニューバ・アーマー)の装甲は、破片避けだ。

 それでも、歩兵のライフルを寄せつけず。


 ビー! ビー! ビー!


 無人のコックピットでは、攻撃を受けている警報音。


 避ければ、後ろの車両に当たる。


 当たらずとも、MAや戦車を抜ける弾丸、ミサイルによる破壊は、その衝撃波だけで致命傷。


 アイたちが乗っている車では、耐えられない。


 ツヴァイの機体は片膝をつき、シールドのような厚い部分を向け、攻撃に備えるも――


 前を向いている肩が、吹き飛んだ。


 片足の太ももが貫かれ、グラリと姿勢を崩す。


 ――メインカメラ、大破


 ――ライトアーム、喪失


 ――レフトレッグ、喪失


 ――動力パルス、反応低下


 一瞬で、『大破』と見なされる状態に……。

 

 パイロットが乗っていたら、死亡だ。

 中まで、貫通している。


 それでも、庇っている車を巻き込まないよう、横に倒れた。


 ドオオンッ! と、4mの巨人が横たわる。

 ちぎれ飛んだ手足は、別の場所だ。

 

 可愛らしく、ハスキーな声が、最後の言葉。


『次の私は、もっと上手くやるでしょう! ちっくしょおおおおっ!!』


 横たわった、手足が欠けているMAは、大爆発。


 真っ暗な市街地が、一時的に明るくなった。


 ――機密保護により、ツヴァイは自壊


 ――痕跡の抹消……完了!



 ――超空間にある、ミーティア女学園


 ピロロ♪


 ツヴァイと同じ顔をした女子は、スマホを出した。

 指で触り、新着を見る。


「……ありゃ?」


 星を模した髪飾りをつけていて、ツヴァイより明るい声。


 室矢むろや重遠しげとおの妻の1人、カペラだ。


 セーラー服の女子高生は、すぐに指示を出す。


 ――直前のデータを読込中……完了!


 ――ツヴァイを復元


 どうして、やられたのか? も、チェック。


 カペラは、頭を抱えた。


「うーん……。これ、面倒だなあ? ただ戻しても、やられそうだし……」


 再び、スマホを弄り出す。

 指を動かしていくと、リストも下へ。


「これを出すかあ……。発進、発進と……」


 トントン


 ダブルタップにより、『XVF-51 スター・ライトニング』が発進準備に入る。


 同時に、やさぐれた、ツヴァイの声。


『あのクソガキ! 絶対に、許さない!!』


「重遠がいるみたいだから、画像とムービー、よろしくねー♪」


『このスター・ライトニングは?』


「壊してもいいけど、地上にはあまり被害を与えないように! ネオ・ポールスターは除く!」


『ハイハイ……。いつも通りね……。じゃ、出るわよ?』


「行ってらっしゃーい♪」


『オリジナルは、気楽でいいわね……』



 恒星間の航行をしている、エルピス号。

 そのハンガーの1つが、動き出した。


 目立つ回転灯と大音量のアラームが、作業中を示す。


 ミッドブルーで塗装された、制宙戦闘機。

 地上でも飛べそうな、お馴染みのデザインだ。


 黄色のライン、赤色のマークもある機体は、発進位置へ。


『XVF-51 スター・ライトニングへ! レディ?』


 オペレーターの声に、ツヴァイが答える。


『オール、レディ! コールサインと地球のネオ・ポールスターへの接続をよろしく!』


『ラジャー! 以後は、当機を「アロー1」と呼称! エルピス号の計算が終わるまで、待機されたし』


 スター・ライトニングは、横に細長い筒のような空間へ下ろされた。

 宇宙への出口は、見えず。


 ツヴァイの操作で無人のまま、最終チェック。


『アロー1よりB53管制へ! 多少のズレはいいから、早く出して!!』


『B53管制、ラジャー! 15秒のカウントダウンに入ります』


 横に細長い筒で、内側にあるフラップのような部分が立ち上がった。

 同時に、空間が歪み、尋常ならざる雰囲気へ……。


 ギュイイインと、高音になっていき、別の景色が混じり出す。


『太陽系の地球……。太平洋上へのワープを開始します。グッドラック! 15、14、13――』


 ゼロと同時に、スター・ライトニングの姿が消え失せた。



 ――地球の太平洋


 ゴボボボボボ

 

 ギシッ ギギギギッ


 ツヴァイの耳に、嫌な音。


 スター・ライトニングの計器でチェックすれば――


 深海1万m


『アホかぁあああああっ! 高度にも注意しなさいよ!?』


 叫びながら、機体を上へ向けた。


 戦闘機の後ろにあるジェットエンジンのような水平2つが、怒りの雄叫び。


 宇宙への打ち上げの如く、見る見るうちに加速していく。


 星の光がない宇宙である深海。

 そこに住む生物が、大慌てで退避する。


 ミッドブルーの戦闘機は2本の白い柱を残しつつ、海面を目指していく。


 今は夜だから、海面を突き破っても、まだ暗い。


 名状しがたい飛行音を響かせつつ、左右の主翼などを動かし、日本のほうへ。


 そのまま、海面ギリギリで、マッハを超える。


 海を2つを割るかのような水しぶきが2つの壁のように残っては、落ちていく。


『やめてよね? 私が本気を出したら、お前が勝てるわけないじゃない!』


 上機嫌になったツヴァイは、AIのギャルソンを倒すため、日本へ急ぐ。


 アイドルフェスの会場で行われているライブを流す。



 そろそろ、この戦いも終わりを迎える。


 言い換えれば、奴らに明日はない!

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