第58話 強襲! US特殊部隊!!-②

 軍事衛星から見下ろす、白黒の映像。

 今は夜で、シンプルな画面だ。


 室矢むろやカレナの自宅がクローズアップされ、熱源として赤の人型。


 カレナとスティアの名前があって、ゲームのよう……。


 そのモニターを眺めているのは、様々なスイッチがあるコンソールに向かっているオペレーター。


 壁際の席で、横に2名。

 その服装と室内の雰囲気は、まさに軍事基地だ。


 よく見れば、すぐ上のモニターは詳細な地形と、ターゲットの位置を示している。


 内側のドアが開き、1人の男が入ってくる。


 オペレーターの2人はそちらを見たが、作業を続けろと命じられ、正面のモニターに視線を戻した。


「状況は?」


「スティア、カレナ共に、動きなし! 自宅に留まっています」

「警察への通報、外部への電話もありません」


 その士官は、IGUイグー(無限の剣の部隊)を指揮している。


 狭い空間に立ったまま、オペレーターの後ろで覗き込む。


「接触していたケイシーとハニガンは?」

「尾行を警戒して、遠回りで合流する予定です」


 オペレーターの返事に、士官はうなずいた。


「よし! 彼らが戻り次第、ブリーフィングを行う。ガンキャリア4機、ナイトアイ3機の空挺降下と併せての突入だ!」


「サー! 本当に実行するので?」

「MA(マニューバ・アーマー)を出せば、言い訳できません。ウチの員数外いんずうがいとはいえ、完全閉鎖のモビル・ストライカーが12人もいるのですし……」


 オペレーターたちの疑問に、士官は首を横に振った。


「ウチの存在が知られた以上、やるのなら徹底的にだ! カレナの実力は不明だが、『あの室矢を名乗っている以上、それに見合った力を持つ』と考えなければ……。スティアについては、言うまでもない! 彼女が街中へ移動すれば、この機動部隊を使えず、いざという時に困るだけ」


「イエッサー!」

「了解」


 士官は、納得したオペレーター2名に確認する。


「上空の無人航空機は?」


 モニターに向き直った1人が報告する。


「順調です! 衛星とのリンクも正常で、予定通りなら、作戦終了まで飛行可能!」


「分かった。引き続き、よろしく頼む……」


 ねぎらった士官は、テレビ局の中継車にも見える指揮車両の外へ出た。


 すぐ後ろに停車している、窓の中が見えない大型バスへ乗り込こんだ。



 ケイシーとハニガンが戻ったことで、士官は大型バスの中央にある通路で前方に立った。


『諸君! 残念ながら、スティアを説得するプランは失敗した! これより、突入プランについて説明する!』


 それぞれの座席にいる隊員が有線でつないだ端末に、カレナの自宅を上から見た、衛星の写真。


『突入場所は、ここ! 事前の偵察を含めて、防衛する部隊や搬入された重火器はないようだ。周りの住宅と離れており、思う存分、攻撃できる!』


 次に、建物の間取りと、周辺の映像。


 室矢カレナ、スティアの顔写真と、それぞれの履歴。


『ターゲットは、第一目標「スティア」、第二目標「カレナ」とする! 優先順位を間違えるなよ? ……我々は「スティア確保」のため、やってきた。彼女の打撃力を考えれば、日本であろうと他国の手に渡るのはマズい。その場合は、「対象の無力化」に切り替える! 何か質問は?』


「目標への攻撃はどの程度、許されますか?」

『殺す気でやれ! それぐらいで死ぬのなら不要だ』


「周囲にバレることや痕跡を気にしないで、撃ちまくれと?」

『そうだ! 今回は、MAをあるだけ出す!!』


 大盤振る舞いに、ヒューッ! と口笛が鳴った。


 説明している指揮官は、それをとがめず。


『このミッションを完遂すれば、お前たちは晴れて、IGUの正隊員になれる! ただちに装甲服を身に着け、作戦開始を待て! 以上!』



 観光バスのような座席からIGUの隊員が立ち上がり、順番に外へ出ていく。


 別の車両で宇宙服をスリムにしたような装甲服を受領して、上の視界をさえぎった場所において装着。

 ヘルメットは、直前にかぶる。


 各自で座り込み、紫煙をくゆらしたり、仲間と喋り、最後の時間を過ごしていた。


 ケイシーは、ハニガンに話しかけられる。


「……隣、いいか?」


 首肯した彼女を見て、ハニガンは座った。


 地面に腰を下ろしているケイシーは、夜空を見たまま、ため息を吐いた。


「昼の神社だけではなく、夜の2人も楽しそうだったわ! 話ができれば、USFAユーエスエフエーに協力してもらうていで穏便に済んだかもしれないのに」


「駐在武官から、手紙が届いたはずだ……。俺たちの所属と名前を言ったうえで突っぱねていたし。奴らの自業自得だ! それに消耗品のままじゃ、戦闘薬の投与が続いて廃人か、くたばっちまうぜ? 今回限りで、そんな生活とおさらばだ!」


 やがて、戦闘準備の号令がかかり、2人とも正面がバイザーになっているヘルメットを被った。

 完全閉鎖で、宇宙服と同じ。


 並みの異能者を一撃で吹っ飛ばせる、専用の重火器を受け取り、今度はアサルト用の車両に搭乗していく。


 向かう先は、室矢カレナが暮らしているペンションだ。

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