第51話 追う者と追われる者
「では、お願いします……」
言うが早いか、
会釈をした後で、取調室の外へ出ていった。
ドアが閉められ、沈黙が訪れる。
スティアの写真を手に取り、しげしげと眺めた。
その時に、警察キャリアの声が響く。
「萩原くん……。今のウォリナーさんの捜索願いは、あくまで口頭によるものだ。祭りの警備で忙しい中、できることは限られているだろう? 見つけたら、彼女を保護するか、その情報を伝えれば、十分だ」
「はい、分かりました」
警察キャリアが、隣のパイプ椅子に座っている男を見た。
すると、そちらが発言する。
「本庁は、
「いや、そう言われましても……。私は本人を見たことがなく、御神刀についても初耳です」
一吾郎の返事に、本庁のキャリアは露骨にがっかりした顔。
「そうか……。
「はい……」
一吾郎にしてみれば、知るかボケ! と返したい。
こんな地の果てに左遷された巡査長に言われても……。
言うだけ言った本庁のキャリアは自分の名刺を置き、パイプ椅子から立ち上がって、先に出ていく。
ドアが閉まったら、今度は県警本部のキャリア。
「本庁も大変、という話だ……。あまり気にするな」
「は、はあ……」
生返事の一吾郎に、県警のキャリアは率直に話す。
「私と、そこにおられる防衛省さんは、同じ目的だ」
スーツ姿の男が座ったままで、会釈。
「防衛省の
一吾郎は、首を捻った。
「えーと……。最近に越してきて、ご近所を避けているぐらいしか……。私も、室矢さんと会ったことはありません」
県警のキャリアが、話をまとめる。
「肝心なのは、室矢重遠と一緒にいて、最近でも力を示した彼女だ! 無理に接触する必要はないが、少しずつでも友好関係を築きたまえ! スティアと槇島睦月の優先順位は、それより下だ」
「ハッ!」
「見送りは不要だ。君の役割を果たすように……」
県警のキャリアだけではなく、防衛省の宮本も、名刺を置いていった。
1人だけ残された一吾郎は、ツッコミを入れる。
「おい、待てよ? 俺がずっと、ここにいる前提か!?」
サラッと、この美須坂駐在所からの異動はないと、告げられた。
さっきの説明を聞く限り……。
◇
室矢カレナは、
臨時のステージに集まった美少女たちが、横に並んで座ったまま、会話をする。
『本日はこれだけ集まってくださり、誠にありがとうございます』
「「「
群衆の呼びかけを聞いた如月は、微笑みながら、片手を振った。
槇島シスターズの中で最も清楚な印象ゆえ、男からの人気が高い。
「ほああぁあああっ!」
「槇島の中では、やっぱり如月ちゃんだよ!」
当の本人が、フォローする。
『嬉しいのですけど……。この明山神社にある槇島神社は、
離れた場所に立ち、屋台のたこ焼きを食べているカレナ。
如月のほうが人気で、その横に座っている睦月は心なしか、存在が薄くなっている感じだ。
「カレナ! ……それ、美味しいの?」
同じように浴衣を着たスティアが、近寄ってきた。
「ええ……。はい、どうぞ」
パクッと食べたスティアは美味しそうに、何度も
次のたこ焼きを自分の口に入れたカレナが、食べ終わった後に質問する。
「助けは?」
「大丈夫よ! 私1人でも、やれるし……。槇島の姉妹もいる状況で、仕掛けてくるかしら?」
スティアの疑問に、カレナはフッと笑う。
視線を向ければ、外国人の観光客が目を逸らした。
いかにも、それっぽい……。
本命から目を逸らすための、
監視でもあるだろう。
ゆっくり考えていたカレナは、舌でペロペロと舐めているスティアに呆れた。
「その食べ方……」
口から外したスティアは、答える。
「ん? ああ、このチョコバナナ? 時間をかけて、食べたいから……」
笑顔で先端から口いっぱいに頬張り、表面のチョコを味わいつつ、休むように外す。
その動きは、別のことを連想させる。
幼い女子中学生の外見と相まって、インモラルすぎますね?
そう思ったカレナは、残りのたこ焼きを味わう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます