第43話 命懸けの刑事ごっこ-②
話がまとまって、それぞれに自己紹介と準備。
スマホについても。
持ってきた菓子、ペットボトルで、簡単に食事。
刑事の
レッグホルスターの二丁が、シャキッと小気味いい音を立てた。
その手際の良さで、怜奈が感心する。
「流石ね。……やっぱり、訓練しているの?」
肩にかけているスリングを調整しながら、源二が答える。
「いえ。普通の警官は、貸与されている拳銃だけ……。私はこれでも昔に、機動隊の
背負い紐のスリングがついている短機関銃のグリップを握り、下からマガジンを嵌めた後に飛び出ているレバーを上から下に叩いたら、バシャッと初弾が装填された。
銃口の向きに注意しながら、女子大生2人を見る。
「さて……。そろそろ、行きましょうか? 私は、この校舎にある『理事長室』に用があります。できれば、周辺も安全にしたいですが……。市民のあなた方がいる以上、それなりの映像を収録したら、すぐにグラウンドのほうへ出ます」
源二は先頭に立ち、すぐに撃てる姿勢のまま、前進する。
その後ろから、怜奈と芽伊。
「ねえ? あそこに、人が倒れていない?」
怜奈が注目した方向には、アサルトスーツの人影。
「御二人は、ここに……」
銃口を向けたまま、源二はスルスルと歩み寄った。
天井を含めて、視線を一周させる。
靴で蹴っても、反応はなし。
力強く蹴れば、ゴロリと仰向けに。
腐り始めている死体だ……。
片手を離して、こちらへ来るよう、ハンドサイン。
女子大生2人が追いついたら、小声で
(前に突入した、
経過した時間から、生きているはずがない。
そういう話だ。
真っ暗な内廊下でも、源二は迷わない。
外から銃声や警察らしき大声があるも、気にしていないようだ。
死角がある場所では、流れるようにクリアリング。
だが、お目当ての『理事長室』は、銀行の金庫か? と思えるほどに、侵入を拒んでいた。
校長室も、廃校にしたタイミングか、厳重に封鎖。
敵との遭遇もなく、まさに肩透かしだ。
やがて、小休止。
見通しが良い廊下で、座り込む。
外は静かだ。
怜奈が、源二に尋ねる。
(警察が全滅した理由は何となく、分かったわ……。でも、一刑事の手に負える事件じゃないと思うけど?)
フッと笑った源二は、立ったままで答える。
(まあ、そうでしょうねえ……)
それを聞いた女子大生2人は、こいつ、何をしに来たんだ? と不審がる。
『テケ! テリリリ!!』
どこからか、妙な鳴き声が聞こえた。
鳥や虫とは思えず、何らかの意思を込めた感じ。
それを皮切りに、夜の校舎で大合唱が始まる。
『テケリリリ!』
『テテテ!』
『リーリー!』
「2人とも、立って! くれぐれも、勝手に動かないで!!」
叫んだ源二は両手でサブマシンガンを持ち、銃身の下にあるフラッシュライトをつけた。
相手の目潰しと、状況を把握するため。
側面のセレクターを『フルオート』に。
キュキュッ
源二は両足のスタンスを広げて、サブマシンガンの後ろを肩に当てる。
液体がドロッと落ちる気配に、そちらに視線と銃口を向けた。
昼のような光が、内廊下に溜まっていく、黒いゲル状の物体を照らし出した。
その量は、車の内部を埋められるぐらい。
床から人のように持ち上がり、頭ぐらいの高さに赤い目が現れた。
触手の先にも、赤い目玉。
細かい牙が無数に生えた口が、鳴き声を上げる。
『リィ! リウィッ!!』
神話生物のユゴスだ。
「ひいぃいっ!?」
「う、嘘……」
それを直視した怜奈と芽伊は、かすれた声で叫ぶ。
芽伊のハンディカメラが、その神話生物の姿を捉えたまま。
ダダダダ
規則正しい金属音と共に、源二が構えたサブマシンガンから実弾が飛んでいく。
鳴いていたユゴスに次々と当たるも、その部分が凹むだけで全く倒せない。
『キュッ!? テケケ、テケリリリ!』
しかし、巨大な黒スライムはびっくり仰天した様子で、逃げ出した。
『テケケケケケ!』
文句を言っているようにも、聞こえる。
そのユゴスは、源二から見えない位置へ逃げていった。
「やっぱり、効かないか……。やれやれ」
源二は空マガジンを落としつつ、マガジンポーチから新しいマガジンを嵌めこみ、初弾を送り込む。
今度は、ドスドスという足音と共に、角から人型の黒い物体が現れた。
ユゴスの上位種である、ユゴス・ロードだ。
即座に発砲しようとした源二だが、そいつは口を作り、人の言葉で話す。
『お前はいったい、何をやっている?』
こいつにも、実弾は通じない。
そう思った源二は交渉するべく、サブマシンガンの銃口を下げた。
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