第41話 超新星(スーパーノヴァ)の爆発
真っ暗なグラウンドの中央。
スティアが、手の平を耳に当てる。
「はい……カレナ? ……え?
虚空に話していたスティアは片手を下ろしつつ、ため息を吐いた。
声をかけようとした春花は、いきなり出現した黄金の台座のような物体に、え? と絶句する。
幼い女子中学生は、逃げ出してきた高等部の校舎を見た。
春花も、釣られる。
復活したのか、ドシンドシンという足音に、ウサギの着ぐるみの姿。
春花はスティアのほうを見て、叫ぼうとするも――
一筋の光が走った。
ウサギの着ぐるみは後ろの校舎を突き破り、中へ叩き込まれた。
その左右で、すさまじい突風が吹き荒れる。
春花が見れば、スティアは前に突き出した
その幼い顔に、怒りを示す。
「重遠がいないのに戻ってきた私の哀しみを知れ!」
黄金の台座が複数の光となって、幼いスティアに降り注ぐ。
胸部、腰、両手、両足、頭部と、黄金の鎧へ。
頭のヘッドギアを最後に、全身が黄金に包まれた。
ブーツと一体化した両足を動かせば、地面が削れる。
拳法の構えのように、両手を動かす。
周囲に神威が広がり、黄金のオーラが辺りを満たした。
座ったまま、目を見張る春花。
「コズミック……エクスプロージョン!!」
黄金の騎士となったスティアは、ガントレットで保護された拳を動かす。
右拳がアッパーのように動き、彼女は上へ振り切ったままのポーズに。
すると、彼女たちが見ている校舎に変化が起こった。
高等部の校舎が下から
コンクリートや中の鉄筋までも、瞬時に溶かされていくように姿を消す。
ウサギの着ぐるみと巣くっていた
もはや、この世の物とは思えない光景だ。
それを見守っていた春花は、思わず
「超新星(スーパーノヴァ)の爆発……」
星を砕くか? と思われた光がおさまれば、高等部の校舎は影も形もなかった。
その地面すら、大きく
ガキィンッ! という金属音に、スティアを見れば、元のセーラー服だった。
「あなたは……いったい?」
真っ暗なグラウンドに、グリーンの瞳。
「知らないほうがいいわよ? 『金星の女神』と言っても、どうせ信じないだろうし……」
冗談なのか判断がつかずに、困る春花。
立っているスティアは再び、エア電話を始めた。
「……ええ! 私も、別に面倒を見る気はないし、あとは本職に任せましょう!」
片手を下ろしたスティアは、すたすたと歩き出す。
「あ、あの!?」
地面に座ったままで片手を伸ばす春花に、スティアは立ち止まった。
振り向きながら、告げる。
「もう大丈夫なはず……およ?」
パパパと、軽い発砲音が続いた。
マズルフラッシュか、小さな光も見える。
場所は……中等部と初等部の合同校舎。
別れた先輩2人の行方もあって不安になる春花だが、スティアは無責任に言う。
「今のは、よく分からないけど……。まあ、大丈夫でしょ! 残りの女子大生2人と合流したければ、ここで待ちなさい。それが嫌なら、あっちで警察に保護されるといいわ!」
一方的に告げた後で、スティアは春花に背を向けて、歩き出した。
さっきの今で、話しかけられる雰囲気ではない。
発砲音があった暗い校舎を見ていたら、もう彼女の姿はない。
「……何だったのかな?」
まるで、夢を見ているようだ。
座り込んでいた春花は、ようやく立ち上がる。
この世の地獄と思われた高等部の校舎は、すでに消えた。
そちらを見るも、さっきまで存在したとは思えず。
ふうっと、ため息を吐く。
「どうしようかな……」
鉛のように、体が重い。
走りっぱなしだから?
先輩たちの安否は確認したいものの、また襲われるのは、嫌だ……。
その場で座り込んだ春花は体育座りになって、中等部と初等部の合同校舎を眺める。
真っ暗なグラウンドの中央に、ポツンといる女子大生。
「無事だと、いいな……」
彼女が外から見守る中で、別行動の2人は危険に晒されていた。
その先に待つものは、いったい何だろうか?
春花が命懸けで庇った、先輩2人。
彼女たちは思わぬ人物と出会い、行動を共にしていた。
女神であるカレナ、スティアには、ただの暇潰し。
動画配信の女子大生3人も、招かれざる客。
けれど、それとは違う人物が1人いる。
現在が過去の積み重ねであれば、その清算も必要だ。
突入する部隊がやってくるのは……早くて、明日の午前中。
ここの県警が、決定的な場面に立ち会うことはないだろう。
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