【打切】突然魔女と呼ばれても困ります!〜女子高生の異世界転移物語〜

チン・コロッテ

異世界へ

第1話 異世界転移は突然に

 隣に住む自称"魔女"のおばあちゃんが死んだ。隣に住むよしみで、共働きの両親の代わりに私の面倒をよく見てくれたの。そのおばあちゃんが死んでしまった。




 私は秋後真冬アキシロマフユ。髪はブラウンのショートボブで、顔はたぬき顔ってよく言われる。美術部に所属する特に目立つ事もない普通の女子高生です。


 今日は隣に住んでいた花子おばあちゃんのお通夜で、花子おばあちゃんのお家に来ています。

 参列した人が帰った後で、おばあちゃんの棺の前に座る私の肩を誰かがちょんちょんとつついた。


「真冬。ばあちゃんからお前にメモ」


 そう言って私に便箋を渡したのは、花子おばあちゃんの孫の鈴木優太。バンドマンにいそうな目や耳を隠すくらいのミディアムヘアにナチュラルパーマの、いつも眠たげな顔のサッカー部。身長は百八十㌢を超えていそうなヒョロっとした男子。歳は同じだけど、遠くに住んでて、今日は花子おばあちゃんの通夜で来たみたい。彼は昔から夏休みになると花子おばあちゃんのところにずっと居たから、私と彼は幼馴染のような関係にあった。



 私は便箋の中身を読んで、それを優太に伝えた。


「『好きな物をあげるわ。何でもいいわよ』だって」

「そっか。どうする?」

「本当にいいのかな?」

「ばあちゃんがそう言ってんだからいいだろ。母さん達にはオレから言っとく」

「じゃあ、お言葉に甘えて。私も花子おばあちゃんの形見があったら嬉しいし。ねぇ、二階のアトリエに行きたい」

「いいよ。じゃあ、行こう」


 そうして、私たち二人は二階にある花子おばあちゃんのアトリエへ向かった。アトリエといっても、部屋が余っているからそこを趣味の部屋にすることにしたみたいで、おばあちゃんはアトリエでよく綺麗な草原と大きな樹の絵を描いていた。多分、日本ではないどこか遠い国の絵。


 優太が扉を開けてくれて、私はアトリエの中に入った。描きかけのキャンバスがあって、おばあちゃんが気に入ってた作品達が壁に飾られている。もう会えないんだと改めて実感して、私はまた少し泣いた。優太が心配してハンカチを貸してくれた。


 落ち着いてから部屋を見て回る。扉から反対側の壁側に置かれた机の上に、可愛い箱を見つけた。こんな箱あったっけ?筆入れくらいのサイズの、オルゴールみたいに蝶番でパカっと開くような古い木箱で、見たことの無い葉っぱや蝶々みたいな生き物が彫られていて、とてもかわいいと思った。



「オルゴールかな?」


 と、ひとりごちて、私はそれを手に持った。そして、ゆっくりと蓋を開いた。優太は扉の近くにある絵を眺めているみたいで離れたところにいた。


 蓋を開いた瞬間、中から光が溢れ出して、私は驚いて目を閉じて軽く悲鳴を上げた。


「きゃ」

「ん、どうした真冬?」


 振り返った優太の目の前にはただ祖母の部屋があるだけで、真冬の姿は消えていた。




 

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