第30話 素直な気持ち

ミライはいつも私を心配にさせる。

依頼で少し遠くに仕事に行ったと思ったら盗賊から逃げてきたっていうし。

心臓がいくつあっても足りないよ…。


「アン?大丈夫?」


ミライが私に語り掛ける。

意識がもうろうとしているけど、優しい声。

心配ばかりしてる私って損な気がする。


夢を見た。


ミライがあのエルフの女と結婚するって報告に来る。

そんな事言わなくていい…。

ミライがエルフの女と笑ってる。

私は涙を流した。


深夜に目が覚めた。

夢なのにひどく怖い。

現実になったらどうしよう。

心が冷え切ってしまっていた。


外に出てみた。

月が浮かんでいた。

真っ暗な空で。

不思議と心が落ち着いた。


会いに行こう。

ミライにきちんと聞いてみよう。



****



眠れない…。

いきなり結婚とか飛ばしすぎだろ。

窓の外を見ると綺麗な月が浮かんでいた。

こっちの世界も月がある。

不思議と安心する。


「結婚…か。するなら…。」

アンがいいな。

まだ付き合ってもいないのに何言ってんだか。


そっか。

断れば良かったのか。

昨日は突然すぎて頭が回らなくなっていた。

冷静に考えれば…カモミールさんには悪いけど。

俺の好きな人はアンなのだから。



****



俺はドアに手をかけた。


「あれ?」


ほとんど力を入れなくても開いてしまう。

赤髪の女の子が倒れ込んできた。


「え?あれ。おはよう」


アンが倒れてしまっていた。

ドアを開けるタイミングで手をかけてしまったらしい。

因みにこの村では鍵をかけないのが普通らしくてのどかなところだ。

俺は毎回鍵をかけ忘れてしまうだけなのだけど。


「いたたた…おはよう。」


「こんなに早くにどうしたの?」


入口に腰かけて、中に入ってこない。

少しむすっとした顔をしていたが、アンは俺の顔を見る。

えーと?

とにかくじろじろ見られている。

俺何かしたっけ?


「あの、エルフと仲いいのね。」


うつむきながら、今度は目をそらす。


「え…ああ、うん。」


俺はどう答えたらいいのかわからない。


「好き…なの?」


「え?」


何を言ってるのだろう。

だって好きなのは…。


「アンが好き…。」

思わず声に出てしまっていた。


「え?」


「私の聞きたかったことは…それじゃないんだけど…まあいいか。」

アンが抱き着いてきた。


「私も好き。」


「結婚するならアンがいいなぁ。」

口から言葉がこぼれた。


「…け、けっこん??」

アンは顔が真っ赤になって慌てている。


俺やばいな…思ってたこと声に出ちゃう。


「そんなに好きだったの!嬉しい!」


満面の笑みを浮かべるアン、笑った顔を見て俺も嬉しくなった。



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