第16話 旅に出た

ミライは今朝旅に出たらしい。


「何で黙ってたのよ!」


私は珍しく父に怒っていた。

朝ごはんを食べている席で、父親がミライはしばらく旅に出ると告げたのだ。


「言ったって、旅に出ることを止めただろう?」


「だからって‥内緒にしなくてもいいじゃない…。」


少し悲しくなる。

仲間外れにされた気分だ。


それにミライってエルフって言ってたっけ。

女性と一緒なんでしょ?

そう、依頼主が女性って聞いてから…何だか心穏じゃなくなってしまっている。

それなのに、一緒に旅に出るって?

エルフと仲良くなったらどうするのよ…。


「そんなにイライラしなくても…。依頼が終わったら帰ってくるんだし、どうしたんだい?」


お父さんの一言で疑問符が浮かぶ。

そういえば私、何でこんなにイライラしているのだろう?


「何でも一週間ほどで帰ってくるそうだよ?」


思ったより直ぐに帰ってくる。


「そっか…良かった。」


私は呟いていた。

少し安堵あんどする。


「そんなにミライのことが好きなんだね?父親としては複雑な心情だが、何も言うまい。」


お父さん何いってんの?

私がミライを好きってそんな訳…ない。


そんな訳ないよね。

黙って出かけるから私は怒っているだけ。

ミライをエルフに取られたような気がして、イライラしていた。


「あ…。」


私、ミライの事好きなのかな。




****




朝早く、俺とファーレンさんは旅に出た。


俺はアンに何も言わずに旅に出てしまった。

言った方が良いとは思ったんだけど。


ファーレンさんが、黙っておいた方が良いと言われたのだ。

一緒に行くとか言い出しそうとか。

流石にそれは無いと思うけど。

まあ、一週間だし大丈夫かな?


「どうしたの?」


カモミールさんが振り返る。

旅は俺とカモミールさん二人きりだ。


「誰か名残惜しいとか?そんな感じかな?」


「いえそんなのじゃないですよ。」

俺は慌てて否定する。


「ミライ、初めてにしては準備がいいよね。色々聞いて買いそろえた感じかな?」

俺はリュックを背負っている。


「ギルドの人に聞いたりしました。あと、アイテムボックスあるので食料も多めに持ってます。」


「え~アイテムボックスあるの?凄いな~。」


「私は水とかは魔法で出せるから、飲みたくなったら言ってね?便利でしょ?」


うん。

便利だよな。

それ、前の世界で欲しかったやつだ。

魔法ってどんな感じなんだろう。





「そういえば、移動手段って徒歩しかないの?」


「あ~ごめんね。他の人に知られたくない場所だから、なんだ。少し休もうか?」


カモミールさんは木陰に入り、地面にシートを敷く。

俺たちはシートの上に座る。

まるでピクニックみたいだ。

カモミールさんはコップに水を入れてくれた。

空中から水が出てくるのが不思議な光景だった。


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