2人
この小さな村では毎年誰かの誕生日を祝ってパーティーが開かれる。今夜も誕生日の誰かを祝ってパーティーが開かれ、村人はみなどんちゃん騒ぎをしていた。
そんな様子を少し離れたところで眺める2人の男女がいた。何事にも捻くれた感性を持つ女の子とその友人だ。
「またみんな騒いでるよ。みんな誰の誕生日なのかわかっていない癖に、騒ぐ口実が欲しいだけなんじゃないかしら」
「また捻くれてるね。いいじゃないか、騒ぐ口実が欲しいだけでも。みんな普段の生活がしんどいのさ。こういうときぐらいガス抜きしてないと」
「それなら勝手に騒げばいいじゃない。何でわざわざ誕生日パーティーなんかするのよ。人の誕生日なんか祝って何がいいんだか」
「そうかい?誕生日を迎えることはとてもいいことだと思うけど」
「私はそうは思わないわ。誕生日が来るってことはまた一年歳を取るってことでしょ?それはつまり体が老いて、一歩死に近づいたって意味じゃない。みんなその現実を受け止めるのが怖いから祝い事をして目を逸らしているのよ」
「それは違うよ。君は勘違いしている。決して誕生日は寂しいものなんかじゃない。世の中が平和になって勘違いしているけど、一年を何事もなく生きて迎えるってことはすごく難しいことだったんだ。まだ戦争があった時代はいつ死ぬかわからない恐怖に怯えながら過ごしていた。だからその時代の人にとって一年を生きて迎えることは簡単なことじゃなかったんだ」
「なに急にスケールが大きいこと言ってるのよ。帰って寝るわ。もう夜も遅いし、なんか疲れたからよく眠れる気がするわ。おやすみ」
「うん、おやすみ。あと、誕生日おめでとう。本日の主役さん」
「うるさい。でも、ありがとう……あんたも早めに寝るのよ」
2人が解散した後も誰の誕生日なのかわかっていない村人はどんちゃん騒ぎを続けた。
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