クーデレ少女は優等生クラスメイトに絡まれる。
岬鬼
第1話 私と双葉
慣れというのは恐ろしいと思う。最初は嫌がっていても気がついたら慣れていて、しまいにはそれが無いことが考えられなくなっている。元に戻りたくても戻れないものだ。そんな事をふと思い始めたのは私の隣にいる変態のせいだった。
階段を登って立ち入り禁止の屋上入口前。私はいつもそこで1人ご飯を食べてたのだが。 いつからか、私の知る中でも一際うるさい変人が一緒に居座るようになっていた。
「ね〜」
「なに?」
「膝枕してよ。」
「やだけど?」
「なんで?」
「太もも触りたいだけでしょ?」
「え〜、そんなことないよー」
そう言いながら太ももに手を伸ばすな手を。
「バレバレだから。」
「ちぇ〜、いいじゃん。唯の太もも白くてスベスベで好きなんだもん」
「開き直って気持ち悪いこと言わないで。」
「グェ」
私は隣にいる変態……双葉の頭を小突く。
「変態」
「おほぉ、ストレートな罵倒いただきました〜」
「喜ぶな。」
「そう突っかからない。美人が台無しよ?」
「余計なお世話。」
そっから私は双葉の言葉に適当な相槌を打ちながらご飯を黙々と食べる。
「ねぇ、聞いてるの〜」
「聞いてる。聞いてる。」
「じゃあ、さっき私はなんて言ったでしょうか?」
「お腹空いた。」
「いや、さっき食べたし。」
「双葉の話は聞かなくても生きてけるよ。」
「そんなこと言うから。クラスでぼっちなのよ。唯ちゃん〜」
「興味ない。」
私は、元々馴れ合うのは好きじゃない。 1人のが都合がいい。周りに合わせて何かをする。それに自分というものはないような気がしてるから。自分が自分でなくなるような。そんな感覚さえある。だから、私は特に友達を必要としていない。
双葉に関しては、クラスでは優等生友達にも先生にも慕われてるのに、何故か付きまとってきてるよく分からんやつ。なんで私なんかに構うのか全然分からない。当の双葉はどう思ってるかなんて知らないけど。
「そう言わないの。唯ちゃん、顔はかわいいんだから。それで愛想良くしたら告白とかされるかもよ〜?」
「されなくていい。」
「ほへぇ〜」
「そういうアンタはどうなの?」
「私?私は……いやー見ての通りの性格だからさ〜」
「それもそうだね。」
「ちょっと!嘘でも否定してよ〜」
「ソンナコトナイヨー」
「うわ、やっぱりいいや。」
「面倒臭いな。」
「かまってくれないからさ!」
そう言って笑う双葉。
私はご飯を食べ終えて残りの時間読み途中の文庫本を広げる。
「あー、私という話し相手がいながら本を読むのね!」
「私が何してても1人で話してるじゃん。」
「ま、そうだけど〜」
「うるさいけど止まらないし。」
「えへん!」
「褒めてない。」
私はため息混じりに活字に目を向け直す。その間も双葉の声はずっと響いてくる。今日の話題は太ももらしい。
「そう!スカートから見えそうで見えない!その絶対領域!私はこの情景だけでご飯3杯いけるね!」
「ふとるよー」
「じー」
適当に相槌を打っていると突然声が聞こえなくなっていた。声に慣れていたから静かにされると逆に困る……と思って顔をあげようとしたがなんか暖かい感触が太ももにあることに気がつく。
「ねぇ。頭」
目を向けるとそこには双葉の小さな頭が乗っかっていた。
「うーん、やっぱりすべすべで気持ちい〜」
「頬ずりしないで。」
「はーい。ん?ということは膝枕はいいのかい?」
「はぁ……もういいよ。好きにして。」
「やった」
気がつくと、私は双葉のうるさい声が日常となり。慣れ始めていた。いつしか私は双葉のうるさい声がBGMとなって読書を進ませてたようだ。
慣れってやっぱり怖いものだ。
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