第2話 焙煎




 焙煎時間が短い浅煎りは、フルーティーで酸味のある風味がする。

 焙煎時間が長い深煎りは、苦みが強く、しっかりとした味わいがある。

 浅煎りと深煎りの間の焙煎度合いを中煎りと呼び、風味、酸味、苦味のバランスがよく、甘さを感じやすい傾向にある。

 らしい。




 ボリボリボリ。

 妙齢の女性は深煎りした珈琲豆を一粒、口に含んでは、粉々になるまで噛み砕いて飲み込んだ。

 これで珈琲豆はあと、九十粒。

 およそ珈琲カップ一杯分。

 次はどの焙煎にしようか。

 麻布の袋の中を覗き込んで、焙煎していない珈琲豆を見つめる。




 さあ、どうやって、終わらせようか。

 このまま、一粒ずつ食べ続けるか。

 それとも、




「もう、休憩は終いか」


 爆撃音を耳にした女性は袋の口を竹糸で結んで珈琲袋をさらしの中に入れ込むと、背をもたれさせていた大刀を片手に持って走り出した。











(2023.9.29)



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