パラレルワールド・俺ハーレム

小野山由高

PART 1 : ハルの嵐

No.01 ハルと『女』

 誰もが羨むような、才能の満ち溢れた人間がいるだろうか?

 

 いるのだ。




 その身と才は眉目秀麗、頭脳明晰、知勇兼備、文武両道、才気煥発。

 その心根は品行方正、謹厳実直、質実剛健、勇猛果敢にして大胆不敵。

 義理人情に厚く、弱きを助け強きも助ける。

 老人を敬い、幼子を慈しむ。

 善を行い、悪を挫く。

 ……ストレートに言えば、『イケメン高身長で成績優秀スポーツ万能、性格も超良い』だろう。

 そんな絵に描いたような『完璧超人』――それが彼、四季嶋しきしま春人はると、17歳の男子高校生である。




 一見、欠点の一つもない春人であったが……ただ一点、致命的な『欠点』というか『弱点』があった。

 それは――




◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 春人と一人の少女が、彼らの通う高校の人気のない裏庭にいた。


「し、四季嶋君! 私と……付き合ってください!」


 耳まで真っ赤に染まった少女の渾身の告白を前に、春人はと言えば――


「…………すまない。今は誰とも付き合うつもりはないんだ」


 一瞬、何かを堪えるような顔をした後に断るのだった。

 告白を断られ泣き出す少女を慣れた感じで慰め、円満にその場は別れる。

 このようなことは彼にとって日常茶飯事だった。


「……ふぅ」


 大きなトラブルに発展することもなく済んだことに安堵の息を吐き、彼はその場を後にしようとする。


「おー、また断ったのか、お前」

「……仕方ないだろ」


 が、どこかで隠れて見ていたのだろう、もう一人の少年が現れ春人に声を掛ける。

 春人同様、高身長イケメン高校生である。

 親し気に春人の肩を抱くこの少年の名は諸星良樹。春人の親友だ。


「さっきの子、C組で一番可愛いって言われてる子だったな。

 ……もったいない」

「らしいな。

「…………いや、まぁいいや。

 帰るか」

「すまん、この後まだ二件予定がある」

「…………お、おう、そうか……」


 その二件の予定も、場所を変えての告白なんだろうなぁと言われずとも理解してしまう良樹であった。


「なぁ、もういっそのこと誰かと付き合っちまえばいいんじゃないか?

 『彼女』ができれば流石に落ち着くだろう?」


 春人はモテる。

 もうモテてモテてモテまくる。

 学校内でも学校外でもモテまくっている。

 もはや他の男子が嫉妬するのも馬鹿らしくなるくらいモテている。

 そんな状況は、春人に『彼女』がいないことが原因の一端であることは疑いようはない。

 なので良樹の提案は筋が通っていると言えるだろう。

 ……『彼女がいても関係ない』という超肉食系の存在は、この際考えないこととする。


「いや、それは――ダメだ」


 良樹の提案を春人は拒否する。


「一時凌ぎのために利用するなんて、彼女たちに失礼だ」

「……真面目だねー……まぁ確かにその通りなんだけどさー。

 けど、誰か一人くらいはぐっとくる子はいないもんか?」


 春人は自嘲の笑みを浮かべ首を横に振る。


「無理だな。俺は多分、一生




 年齢問わずあらゆる女性に好かれる完璧超人の春人にある唯一の『弱点』。

 それは――春人はということである。

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