いつものとおりに

一乗寺 遥

いつものとおりに

朝いつものように目が覚める。しかし、何かがちがうような気がする。まるで誰かから見られているような感じなのだ。 


いつものように顔を洗い、服を着て、仕事場に向かう。通りを歩く人たちも満員電車の中の様子もいつもと同じだ。寸分違わず。


ん?寸分違わず?何かおかしくないか。これまで感じたことがないことばかり。


目の前を歩いていた男が突然倒れた。ひどく苦しんでいる。


「おい大丈夫か」

声をかける前に男はこと切れた。


歩く人たちは皆気が付かないのか前を向いたまま通り過ぎていく。

なぜだ。人が倒れているのに。

男は呆然と立ち尽くした。



「あっ」



突然目の前が暗くなった。



気が付くと朝。男はいつものように動き始める。

寸分違わず。




ごく稀に制御が効かず自我が解放される場合があるが直ちに修正するシステムが組み込まれている。

安住の地が見つかるまでは意識を制御して魂を維持できるよう数百万年前の祖先がAIにプログラミングしている。


そうしないと、もはや肉体として存在できなくなったことを受止める時間も余裕もなく、絶望してしまうから。


                                   終わり

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いつものとおりに 一乗寺 遥 @yoichijoji56

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