悪役貴族に転生したが、何故か主人公よりスペックが高い件

ストレート果汁100%りんごジュース

第1話 悪役貴族に転生

 朝起きて、イケメンに生まれ変わっていたら、みんなはどう思う?


 嬉しい、モテモテ、ヒャッハーこれでハーレムは俺のモンだぜ、泣きぼくろえっろ、など、こんなことを思うだろうか?


 そりゃあ、イケメンに生まれ変わったらのなら、誰でも嬉しいことは知っている。


 だが、「悪役貴族の」という枕詞がついたらどうだろうか?


 俺は察した。


 今世でも、早死が確定した、と。



 侍女であるラミィに上着を着させてもらいながら、俺は転生したばかりのこの世界について思考を巡らせる。


 おそらく、この世界は俺が生前にプレイしたことのあるRPGゲームで間違いないだろう。根拠は鏡に映っている俺とラミィの姿。性格のねじ曲がった悪役貴族と虐げられていたヒロインにそっくりである。


 主人公にとって攻略対象であるヒロインのラミィと、それをあの手この手で邪魔する悪役貴族のロサリア。


 よりによってロサリアかよ…………このゲームはかなり高難易度に設定されており、大抵がバッドエンド、ロサリアの介入によって誰かが死ぬバッドエンドで幕を閉じる。しかし、数少ないハッピーエンドに辿り着いた場合、100%ロサリアが死ぬ。


 つまり、最後には誰かしら死ぬのがこのゲームである。


 まぁ、ゲーム内のロサリアは相当ヤバいことを繰り返していたからな。アイツが死んでも誰も悲しまなかったのだが…………


「……? どうかされましたか? ご主人様」


 俺が難しい顔で考えていたからか、ラミィが鏡越しに俺を見ながらそう聞いてくる。俺に対してびくびく震えているこの少女こそ、主人公の攻略対象の一人、「虐げられていた少女」ラミィである。


 言わずもがな、虐げていたのは転生前のコイツ、ロサリアね。


 ラミィはユーザーから絶大的な人気を誇っていたが、その理由は彼女のギャップ性にある。


 女性にとっての黄金比のような身体つき、何も興味のないような無気力の態度が普通の彼女だ。


 しかし、彼女が好きな人を前にした瞬間、その性格はガラリと変わる。


 とんでもないキス魔であり、手を握ったり、身体を寄せてきたりと、身体の接触行為が大好きすぎるのだ。すぐに主人公にくっつきたがるのだ。長時間触れ合っていると興奮してくるのか、性格が若干Sっ気になるのも人気のポイント。


 存在自体が18禁な少女、それがラミィである。


「いや、何も。少し考え事をね」

「左様でしたか。それは大変失礼致しました」

「気にしないで」


 俺がそう言うと、ラミィは驚いたように目を見開き、鏡越しに俺を見る。


 まぁそうか。だってロサリアだもんな。急にこんなことを言い始めたら頭おかしくなったんじゃないか、って不安になるよな。


 というかそもそも、なんで俺転生したんだっけ?


 トラックに轢かれるとか、そういうベタなやつではないと思う。だって俺だし。


 確か…………ネットの記事に睡眠を取らずに生活し続けて、ギネス記録に認定された人のインタビューが載っていたんだよな。記録は一週間くらい。


 それを友達と読んで「せっかく夏休みなんだし俺らもやってみようぜ」ってなっていろんなところに遊びに行ったんだよな。30時間くらい起き続けた後にボウリング場に行って…………からの記憶がねぇ。


 え、俺の死亡原因って睡眠不足? 1日半起き続けるだけで死ぬの? 普段8時間くらい睡眠とっていたんだけど。


 …………待てよ?


 夢の中にいる可能性も捨てきれないのか。いや、夢だろコレ。さすがに1日半起き続けただけで死ぬとかはないでしょ。


 そんなことを考えていたら、窓から部屋に強風が吹き抜けた。


「…………ってえ!」


 風によって煽られたグラスが俺の足の指先に落ち、思わずそう声を上げてしまう。


 夢じゃねぇ!? この痛みは夢じゃねぇ!?


「申し訳ございません! ご主人様!」


 顔を蒼白にしたラミィがそう謝罪をしてくる。


「いや、ラミィのせいじゃないことは分かってるから謝らないで」

「そんなわけには…………すぐに片付けます」


 そう言って割れたガラスの破片を片付けようとこちらに寄ってくるのを、手で静止させる。


「手切っちゃうから俺がやるよ。箒とちりとりはない?」

「私の失態ですので…………」

「いいから。探してきてくれる?」

「……はい」


 そう、戸惑いながら部屋を出ていくラミィ。


 1人になったことで、少し気が楽になり、ため息をつく。


 なんでロサリアになったのかは分からないが取り敢えずはこのまま生きていくしかなさそうだ。


 なんとか主人公とは関わらないように生きよう。死にたくないし。


 でもロサリアって確か、めちゃめちゃスペック高いはずなんだよな。主人公と同じで全属性持ちだし、確か父親が剣聖かなんかだから、剣技もめちゃくちゃ凄い。


 ストーリーの最後の方で、ラスボスの二歩手前くらいで主人公とタイマン勝負したのがロサリアだったが、主人公のレベル80、魔法レベルもオール7でいい勝負だったんだよな。


 ってことはロサリアもこれと同じくらいの能力を持っているんだろうか。


 ちなみに魔王のレべルが90で魔法レベルがオール9ので、ロサリアは普通に魔王軍四天王より強かったはずだ。そんな強いなら協力し合えや、と思ったこともあったが、ロサリアの性格がゴミすぎたので、その考えはすぐに吹っ飛んだ。


「ただいま戻りました」


 そんなことを考えていると、箒とちりとりを持ったラミィが戻ってきた。思っていたよりも早かったな。


「ありがとう」


 掃除用具を受け取って、ガラス片を集めていると、ソワソワした様子のラミィが俺に声をかけてきた。


「お言葉ですが、ご主人様は体調が優れないのではないでしょうか?」

「ん? なんで?」

「普段なら、グラスを落とす前に風魔法で防がれますし、落としたとしても同じく風魔法で集めていらっしゃいます。魔法を使用されないので、魔力障害か何か起こっているのではないかと……」


 そんなことできんの?


 魔法なんて使ったことがないからそういうことができるなんて分からなかった。


「あぁ、それは大丈夫。たまたまだよ」

「そうでしたか…………失礼しました」

「謝らなくていいよ。そうだ、ラミィ。自分の魔法レベルを見る方法ってなんだっけ? ド忘れしちゃって」

「ステータスオープン、と唱えれば神の窓が表示されます。本当に体調大丈夫ですか? なんというか……ご主人様らしくないと言いますか」

「大丈夫大丈夫。……っし、ステータスオープン!」


 俺がそう唱えると、俺の視線上に半透明の窓が表示された。


 ゲーム通りなら、自分のレベル、自分が取得しているスキルのレベルが1〜9の数字で表示され、持ち合わせている場合は、特殊スキルも表示されているはずだ。


 そう思い、神の窓を覗き込んだ俺は、素っ頓狂な声を漏らした。


「…………は?」



ロサリア・フォン・アスファルト


Lv8   魔力量9837


【スキル】


料理:Lv10

剣術:Lv10

体術:Lv10

風魔法:Lv10

岩魔法:Lv10

雷魔法:Lv10

草魔法:Lv10

水魔法:Lv10

炎魔法:Lv10

氷魔法:Lv10


【EXスキル】

・七神の使徒


【状態異常】

・古代龍の呪い 《エラー》



[あとがき]


 初ファンタジーになります。見守っていただけると嬉しいです。

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