機械仕掛けの御伽噺
月ノ瀬 静流
希於《キオ》
これは、ほんの少しだけ未来の物語――。
てててててっ……。
老人ホーム“ヴィラ松風”の
床で毛づくろいをしていた三毛模様の
「
「走っちゃ危ないわよぅ」
肘掛け椅子で
「
にこっと笑った男の子の頬に、えくぼができる。子犬のように元気な
母親の
「あれ、ミケちゃんは?」
「
ころころと笑いながら春子が手招きすると、
発売当初は賛否両論、色々とあったが徐々に人気を集め、需要の高まりと共に低コストで増産可能になったため、次第に社会に浸透していった。ご多分に漏れず、このホームでも多くの入居者が愛玩していた。
「ミケちゃん、良くなったんだね!」
「あら、ミケの具合が悪かったの?」
事情を知らない和代が声を上げる。
「そうなのよぅ。この子も古いから、もう駄目だと思ったのよぅ。でもねぇ、いくらお人形でも悲しくてねぇ……。そしたら
「
仲介役の
「ええ!? あの吉岡さんが治してくれたの?」
和代は素っ頓狂な声を出して目を丸くした。
「吉岡さんは昔、
春子は意味もなく手をぱたぱたさせながらミケの治療の様子を語った。和代が大袈裟なくらいに相槌を打って、話は尾ひれをつけて広がっていく。
「吉岡さん、喋ってみたら意外にいい人だったわぁ」
「あら、そうなの?」
「そうだよ! お話しすると大好きになれるんだよ!」
がばっと
春子は笑いながら
「そうねぇ、
「えええっ! ムシバイキンが来る~!!」
彼は母親に厳しく躾けられているらしく、決して老人たちからお菓子を貰わない。この歳の子供なら好きだろうに「ムシバイキンが来るから要らない」が決まり文句なのだ。ムシバイキンとは虫歯の菌のことらしい。
「宏おじいちゃんとこ、お礼に行ってくるね! またね!」
子犬のように走っていく
――
初めは迷惑になるのではないかと心配された彼だったが、いつの間にか老人たちの
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