第41話 ルーベラ


 ということで、今は後期の学期が始まって1ヶ月ぐらいだから、出発するのはもう少し先になる。


師匠が受け持っている授業は、1週間のうち連続して2日だ。魔法陣の授業は、3年生と4年生だけで、1、2組しか担当していないから。


受け持ちの授業や準備があるといっても、毎日ずっと学園にいなくてはいけないわけではないようだ。


そこで、授業の日と準備の前日以外は、殆ど外に出掛けるようになった。足が再生した師匠は、彼方此方に出掛けている。


外に出るのは、授業で使う魔法陣の土台やインクの材料などの採掘・採集という名目がある。


一般的には、店から購入するか、そこになければ採取の依頼をするかになる。


グレンジャー先生やアッサム先生もそう言っていた。でも、師匠が外に行くようになると二人とも自分が必要な物について、採取をリクエストするようになった。


勿論、対価は頂く。他の先生方からも発注があるようだ。

「いい小遣い稼ぎになりそうだ」

師匠、悪い顔してますよ。


私は現地で、しごかれてる。足がまだ万全ではないと本人は言っているが、嘘だろうと思うほどの動きだ。


師匠、剣士としても相当な気がするが、何故魔法陣学を担当しているのだろう。聞いてみたら


「俺は、そんなに魔力量が多いわけじゃないからな。魔法陣符を多用してるんだ。魔法陣には前もって魔力を込めておけるから、色々と便利だぞ。物によっては、魔力が使えないときにも使えるようにできるからな」


場合に寄っては魔力を封じられてしまう場合もあるんだそうで。そんな場所でも使える事が多いという話だ。


そうか、魔法陣て便利だな。媒体を工夫するとかなり魔力量を乗せられるらしい。


外での荷物持ちは、私の仕事になっている。体力つくりだと言われた。


でも、そうした外でないときも、走り込みやら何やらで体力をつけるように指導されている。


 冒険者見習いとして色々と指導をして貰っていた前回は、子供向け、本当に初心者用だったのだと身に染みる。


実際、魔物などにあったらどうやって躱すのか、どうやったら会わないで済むのかというのが中心だった。でも、今回はどうやって仕留めるのか、という方法になっている。


とにかく、時間があれば外へでて採取に、訓練にと明け暮れている。


出かけた後は、クタクタになる。でもね、若いから、ちゃんと寝ると翌日には元気にお仕事、とやっている。仕事の合間にも体を鍛えているので、やはり、毎日がクタクタでよく寝られる。


手足に重りって何、短期決戦でもコレ効くの ? 

職員用の食堂やクリーニングがあって良かった。自分で支度するのは今は考えられない。



 ある日のこと、そんな出先で、もの凄いグラマラスの真っ赤な髪のお姉様に会った。

迫力の美人。アマゾネスってこういう人かも。


「マリウス、本当に足は大丈夫なの」

ハスキーヴォイスっていうんでしょうか、とても色っぽいお声です。もんのすごく親しげに師匠と話している。


「おう。ここだけの話だが、聖女様のお陰でな。足は良くなった」


師匠の横で唖然となってみている私に気がついた彼女が、

「ん、なに、このおチビちゃんは ?  」


と、こちらを探るような眼で見てきた。


「こいつは、俺の弟子でソルっていうのだ。学園では助手もしてもらっている」

「お前が、弟子」


上から下まで、ジロジロと見られています。お姉様の迫力が怖いです。なかなか審査が厳しそうですう。


師匠と気安いけど、もしかして恋人だろうか?


「で、ソル、こいつはアイザックだ。学園からの腐れ縁で、パーティでも一緒だった。今回、同行を頼もうと思っている奴だ」


「へ?  」

頭の中で、名前と姿が結びつかない。アイザックって女性の名前だったけか?


「もう、マリウスったら。私の名前はルーベラよ。アイザックなんて無粋な名前で呼ばないで」


「学園時代から考えると、化けたよな」

クスクスと楽しそうに師匠が笑っている。


プンプンしているアイザックさん ?  それとも、ルーベラさん ?  の見た目はとても可愛い雰囲気になった。可愛いで合っているよね。


「まあ、いいわ。貴方、ソルね。私のことはルーベラさんと呼びなさいな」


そんなこんながありまして。



 ルーベラさんとは採取先の森で合流していた。夕食後、焚き火を囲んで三人でお茶を飲み、師匠が色々と話をした。


「で、原始の森への道案内を引き受けたと」

「そうだ」


「それで私にも一緒に行って欲しいという訳ね」

「お前がいると、何かと便利だ。女避けにもなるし、奥の手もあるしな」


「女避け。ああ、聖女様ご一行だものね。女性が絡むのね。何、恋人のフリでもしろってこと。あんた本当に、私のことなんだと思っているの」


ウンザリした顔で、ルーベラさんが言うと、

「都合の良い、相棒だね」


ニンマリした顔で師匠が答える。フン、と鼻で笑って

「しょうがないわね。高いわよ」


見ている私が真っ赤になっちゃうような色香を匂わせる、そんな微笑みを見せてルーベラさんが了承してくれた。なんで、こんなに色っぽいの。


なんとなく私の方が顔が赤くなる。こんなに色気たっぷりなのに慣れているのかな、師匠は顔色一つ変えていない。


ルーベラさんというのは、一体どういう人なのだろう。アイザックという名前だったというけど、あのボリューミーなお胸、キュッと引き締まったお腰、まん丸いヒップ。


どこをどうみても野郎には思えない。この世界には性転換手術があるのかしら、整形とかできるの。


待って、魔法って可能性の方が高いのか。魔法で性別転換ってやつでしょうか。そんなの聞いたことないけど、あるの ? 


何をしたらあんなに大きなお胸になるのでしょう。胸をガン見しているのに、気がついたルーベラさんが


「あら、ソル君。そんなに食いつくように見ていたら、女の子に嫌われるわよ」


っと言われてしまい、余計に顔が赤くなった。師匠は笑っている。


「ルーベラお姉様に、何か聞きたいことでもあるの。一つだけなら答えてあげなくも無いわ」

首を傾げて、そう聞かれた。聞きたいこと、沢山有ります。


「奥の手って、なんですか ? 」

「ヒ・ミ・ツ」


色っぽくウインクされちゃったけれども。結局二人とも、教えてくれなかった。ヒミツ、多すぎません? 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る