第12話 学園で、ボッチ


 私が一人部屋になった理由は、実際には人数の問題ではなかった。


後から聞いた話なんだけど、男爵令嬢が1組に入ることは、厄介事になる可能性が指摘され、一人部屋になったんだと。

原因は義姉にあった。去年の義姉は試験ではトップ、1組となったことで、色々と生徒間の問題に巻き込まれたようだ。当初、同室の男爵令嬢にやっかまれて揉めたのだという。


それを納めたのが、同じクラスのエリカセア公爵令嬢カロネイス様だったらしい。現在義姉は、カロネイス様と同室だと聞く。


あの二人は6年越しの付き合いになるのか。そりゃ、お互いに影響力大きいわ。

義姉の情報は全く家には届いていなかった、と思う。そんな話を耳にしなかった。


男爵様は、知っていたのだろうか。全く家の中で話題になっていなかった。

兎に角、義姉の事例の影響で、今年はそれを防ぐために、私は一人部屋の処置になったとか。連続して男爵家の令嬢が1組に入るって、無かったんだって。それで、今回は騒動にならないように、最初から一人部屋に配置されたということらしい。


同部屋の人と、最初のお友達になるものだと期待していたのに、残念。お茶会などに出席することもなかったので、貴族のお友達はいないのだ。


 学校のクラスは、入試に順位をもとにして、分けられる。上位から5つのクラスだ。クラスの人数は10〜15人程になる。私はギリギリで1クラス、トップのクラスに入った。学年で1組と2組はトップクラスと呼ばれ、授業内容のレベルが高いという話だ。


 学園での授業は、教科としては教養として歴史や文学、政治経済、数学、音楽、ダンスなどがある。だけど、主力は魔法関連の授業だ。


午前中は魔法関連の授業のみ。午後になって他の教科の授業もあるみたいだけど、クラスや学年によって、比重が異なってくる。


低学年での1~2組は教養科目が少なく家庭教師から教わった事のお浚い程度になる。そう、知ってて当たり前の確認ぐらい。


トップクラスと呼ばれる1組、2組は、授業内容が教科によって高校レベルが要求されると考えている。家庭教師の先生の話では、かなり高度な内容になると言ってたから。


おいおい、12歳ってまだ小学生だよと、ツッコミを入れたい。まあ、そのために前もって家庭教師をつけて勉強してきたわけだけど。


必死で勉強していたし、前世のせいで気がつかなかったけれど、冷静に考えればかなりのレベルだったのだ。だから、学園の授業内容は高校レベルかなと思っている。それでも、受講してみないとわからないけれどね。


それでも、中心は魔法関連の授業だ。魔法学では、実技と理論の二本立てになっている。ここで、基礎を徹底的にたたき込まれる。


3年生になってもトップクラスであれば、魔方陣学、錬金学など幅広い分野を学べる。また、3年生以降の授業は選択制となり、魔法関連の授業と領地管理関連や文官になるために必要な科目など、自分の将来に必要な知識を選べるようになる。


魔法について幅広い分野を学びたいと思ったので、トップクラスに入ることを目指した。義姉のお陰で、ここまで来たといっても過言ではない。


因みに期末試験の成績によって、翌年のクラス替えがある。成績が落ちれば、下のクラスに行くことになるのだ。

成績が良ければ、上のクラスへ。入れ替え制ですね。


学年の1、2年生は、魔法についての基礎を徹底的に叩き込まれる。

4年生以上になると、他の学年と連動した授業などが組まれる。


本当は、トップクラスじゃないほうが良いのだ。何故ならば、上級生になると上級生と組む事になり、それで攻略対象者'ズの面々と顔を合わせることになるからだ。

面倒くさい。因みに、攻略対象者'ズは一つ上の学年、義姉と同学年だ。


でもさ、トップクラスは授業内容の質が高いのだ。

クラスは期末試験と実技の成績で見直されるから、3年進級時にもうちょい下になる可能性はある。せめて3年まではトップクラスにいたいけど。



 さて、学園の初っ端は親が参加するような入学式みたいなものは無かった。全員が講堂に集まって学園長のお話を聞き、簡単な説明をうけるようなものはあったけど。お話が終わると、すぐに教室へ入る。クラスの顔合わせだ。席順も決まってないって言うので、皆さんが着席してから、あまり目立たない場所に腰掛けた。

1組は10人でした。女子が5人、男子が5人。皆様、伯爵家やら公爵家やら、本当に上位貴族っきゃいなかった。


私の容姿は、華美なものは身につけず、地味目を心掛けている。眼鏡を掛け、髪は三つ編みで一つにまとめ、前髪は長くて少々顔を隠し気味にしている。

え、なんでそんなに目立たない格好をするのかって。

言いたくないが、私はすこぶる可愛いのだ。前世の平たい顔族のアイドルなんか目じゃないくらいに、多分。


隠蔽でオッドアイを誤魔化しているのには理由がある。

オッドアイってね、ものすごーく珍しいらしい。それもあって男爵様は私が家を出ることを極端に嫌っていた。

そう言えば、熱が出る前はオッドアイじゃなかったと言われた。熱のせいかもしれないって、お医者さんが言ってたって。


貴族の情報網で、もしかしたら私のオッドアイが知られているかも知れないけど。まあ、たかが男爵家の令嬢なので、注目を浴びるってことは無いと思いたい。

あくまでも念のため。興味がひかれるようなことは、極力避けたい。攻略対象者’ズの目を引きたくないから。


それから上位貴族の皆様は、こちらが分を弁えていれば向こうからは構ってこない、大丈夫だよとは、男爵様談。だから、目立たず静かにしていようと思っている。



部屋は一人部屋だし、クラスでは下位貴族の私は、授業が始まった当初は、一人のままだった。


いじめられるとか、そういうのはなく、どちらかといえば遠巻きにされてる感じかな。何だろうな、無視されているわけではないんだけど。


距離を測られているという気がする。私の方から話しかけることはない。それはマナーとしても教わった。学園内は別よ、なんて思ってもいない。距離を測っているのは、お互い様か。


小さい頃からしっかり学べるなんて、上位貴族ばっかりだからなあ。やっぱり、男爵位は珍しいんだろう。


そんな中トップで入学している義姉、凄いな。

家庭教師の先生方は、多分義姉に合わせて、レベルを上げたのだろう。私は義姉のレベルにつきあう事になっただけで、お零れに預かったってやつだ。

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