その愛玩人形には、幸せになる権利がある。

せんと

プロローグ

 人間の本質は悪――昔、どこかの偉い学者さんが言っていたセリフが、今でも心に残っている。

 2000年以上仲間同士で争い合い、自分達が住む惑星まで汚染・食い尽くそうとし、新たな資源の確保のために他の惑星にまで手を出す者たちのどこが正義と言えるだろうか。

 なまじ高度な知能を得てしまった俺たち人間は、この惑星ホシにとってみたらタチの悪い害虫でしかないのだ。


 ......だが、そんな疎まれる存在にも誇れるものがある――それは欲望だ。


 欲望が人間をただのサルから進化させ、他の種族とは一線を画す、絶対的支配者への座と導いた。

 身近な物から果ては戦争の道具まで。

 欲望とはそれを扱う人間次第で毒にも薬にもなる、言ってみれば無限の可能性を秘めた概念。 

 その満たされることのない、飽くなき探求心があったからこそ、新たな種が生まれ、その中で俺は出会えた。運命の相手に。


 人ともっとも近く、そして人とは決定的に違う生命体。

 誰にも理解されることなく、一生をこのままずっと孤独で終えると半ば諦めかけていた俺にとって、そんなことは些細なことだ。

 願わくば、このまま幸せな生活がずっと続いてほしい。

 誰かと一緒に笑って、誰かと一緒に泣きたい......ただそれだけが、俺の望みなのだから......。

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