第3話

「…おい、バカ妖精。どこに連れてく気だ?」


じっと妖精のことを睨む。妖精はそんなのも意に介さず話しだす。


「内緒!痛い!なにすんのさ!」


ムカついたから反射でビンタする。その後俺は妖精に連れ出され、普通…いや、どこかおかしい公園に着く。


「なにこれ…?」


何かおかしい…とは言っても公園"は"普通だ。だがしかし普通の公園にあるはず…というかいるはずのない物がいる。歪な姿をした怪物…としか言いようのない不気味な化け物。口元からは涎がだらだらと垂れている。


「こいつが君たち魔法少女の敵。さ、戦ってみようか!」


そう言うと妖精は街灯の上に座り込んでコチラを見下ろしている。その様にむかっと来たが今は怪物だ。


「ぐるる………。」


どうやらこちらに気づいたらしい。ジリジリと近づいてくる…が、俺は戦い方を何も教わっていない。つまり…詰みだ。このままこいつに殺されて終わる…のは嫌だ。せめて、少しだけでも抵抗してやる。


「お、ようやくかな?」


妖精が何か喋っているが今はそれどころではない。怪物が俺に目掛けて飛びかかってくる。間一髪で避けて横腹にストレートをぶち込む。が、全く手応えがない。

元の体なら多少のダメージはあったかもしれない。しかし今の俺のこの細い腕じゃ多少殴っただけじゃ意味がない。こう…メリケンサック的なのがあれば素手でも戦えるだろうがこっちにはなにもない。

なんて考えてるうちに怪物が首元に噛みついてくる。


「あ"がっ!?」


全身からサーっと血の気が抜けていくのを感じる。痛みで思考が纏まらない。ただ一つ分かるのはこのままじゃ死ぬ。それだけだ。本当にこの世界はクソだ。死にたくない。なんで俺ばっかこんな目に?ふざけるな。俺は、この腐った世界を許さない。不平等なこの世界が嫌いだ。


「私が助けてあげよっか?」


誰かの声が聞こえる。聞いたことがあるような、ないような。…なんでもいいや。本当に助けてくれるのであれば、助けてほしい。


「いいよ。それじゃあさ、私と、不平等に不平等な世界を呪いましょう?」


その声を聞いた瞬間俺の意識は途絶えた。


◆◇◆


あ"…?何がどうなったんだっけ?


気がつけば目の前には血の池ができていた。何が起こったのか理解できずその場で硬直してしまう。ふと妖精のいた街灯に目を向けるが妖精の姿はそこにはなかった。とりあえずここにいても何もできない…と移動しようとするが足に力が入らず崩れ落ちるようにその場に座り込む。


「…なによ…。これ…。」


そこに、1人の少女が降り立つ。恐らく彼女も魔法少女?とかいうやつなのだろう。


「…!?ねえ、そこの君!大丈夫!?」


どうやら彼女は俺に気づいたらしい。


「だ…いじょ…ぶ。」


声が酷く掠れている。本当に何があったんだろうか?思い出せない。


「あなたも…魔法少女よね?」


少女の問いにこくりと頷く。


「とにかく、私と一緒に来て頂戴。あなたのことを保護してあげる。」


されるがままに抱き抱えられ運ばれる。正直に言おう。顔から火が吹き出そうなほどに恥ずかしかった。

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