画図百鬼夜行的なBL

狐照

ぬっぺふほふ

異様なまでに肌が白い青年が、潤んだ瞳で俺を見つめてる。

病的なまでに白い肌、透き通ってうつくしい。

あまりにも白いもんだから、彼を知らないひとは無闇矢鱈と心配する。

でも俺は彼が健康なのをよく知っている。

だから、染みひとつない頬をついつい強めに撫でてしまう。


「それは良いって意味?」


「あ、違う」


「むぅ…」


露骨に拗ねた顔をされてしまう。

でも嫌だ。

正確には、言われて口にするのは嫌だ、だ。


「あのさ」


「うん」


「いつもは、こー煙に巻くようにさ」


「うん」


「真実味出しつつ騙す感じ、じゃん」


「うん」


そこそこ酷い傾向なのだが、悪気はないからそれが何かみたいな顔される。

そして俺はそれが嫌いじゃないので、許してるので、問題にはならない。

しらばっくれてとぼけて嘘吐き。

それが彼のデフォルトなのだ。

そしてそれは俺を傷付けることが無い。

だから可愛いっていつも他人事。

たまにやられるいたずらも、可愛いなぁコイツぅってなる。


だから、疑問でならない。


「どうして、黙って、食わせればいいのに」


「それは…」


いつもみたいな騙し討ち、すればよかったのに何故しない?

不思議だ。

君は君の、妖怪の理論で存在しているのに。


座る俺の膝の上に腰を下ろし、もじもじしている妖怪ぬっぺふほふ。

非常に可愛い。

若々しい色白の青年でしかないのだが、妖怪で、可愛い。

思わず頭を撫でてしまう。

ペット可愛いとは別ベクトルで愛でたいのだ、何時も何時までも。


「それは、さ」


「うん」


俺の服をもちもち、針のない手で波縫いしてる。


「好きだから、勝手に不老不死の俺肉食わせたら、さすがに嫌われると思ってっ」


がばっと抱きつかれる。

素直な本心を、素直に言われた俺は、驚きを隠せなかった。


「…そんなに、俺のこと好きでいてくれたんだ…」


妖怪に好かれること、それは特殊で特別で、刹那的なものだとばかり思っていた。

でも、どうやら違うらしい。

同じ時を生きたいけど、それを彼の感覚で勝手にしなかった。

そう、思うほど、俺を好き。

胸が苦しいほど、嬉しいよ。


「…ありがとう…うれしい…好きだよ…ぬっちゃん」


愛おしい想いを込め抱き締める。

名前無いっていうから、俺が勝手にぬっちゃんって呼んでる。

妖怪ぬっぺふほふ、らしいから。

抱き締めたら、男にしては柔らかい身体が俺に引っ付く。

白粉みたいな良い匂いの体臭を、首筋顔を埋め胸一杯吸い込む。


「…じゃあ…それって、食べてくれるってこと?俺肉」


「君肉って分かって食べるのはいやだなぁ」


「じゃあどーすればいいんだよぅ!俺肉食べてよぉ!」


力一杯抱きしめ返される。

ちょっと苦しい、妖怪って自覚持って欲しい。


「…料理にこそっと混ぜたら?」


「…え、天才…?」


思わず吹き出してしまう。

いつもは恐ろしいくらい騙すのが上手いのに、思いつかなかったんだ、こんな簡単な手口。

けどそれは、俺に対して誠実って証拠だから。

嬉しくなって押し倒す。

いやんっていわれたけど、期待に満ちた顔をしていたので、別の意味で彼肉をひとまず堪能することにした。


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