達人山行黙示録

starmaster_shim

第1話

今を取り巻くCovid-19、通称「コロナ」が流行して

病気に感染するのを恐れた人々が

籠城生活を強いられて、はや数年が経った。


「僕」自身、あまり旅行をする性質でないが

コロナ禍になってその性質がより極端な方向に出ていた。


コロナになって旅行をしなくなって。


いやコロナになろうがなるまいが

旅行する気が起きていないのだ。


下世話な話であるが、理由は単純で

「旅行には金がかかる」というところである。


そんな「僕」にも、どういうわけだか

山登りに一時期ハマっていた時期があったのだ。


どハマりしていた時期がだいぶ昔過ぎて

もう大正時代の記憶なんじゃないかって今では思うけど。


生まれの日の本の国の、隅から隅まで行こうって

意気込み勇んでいた時期があった。


今は何で辞めたのか?


「道具に資金がかかる」

「地図の読み方がわからん」

「そもそも、命懸けなのが怖い」


そんな理由で辞めたわけだが。


うーん、なぜ山行こうなんて思ったんだろ?


しかしCovid-19のせいで表立って旅行したい気持ちも起きない。

「Covidコンチクショウ」っていう気概すらも湧かない。


そんなわけで今思えば日本のあちこちに飛び回ろうとしていた、

あの時のフットワークの軽さが羨ましい。



ーこれは、とある中小企業に勤める

 一介のサラリーマンである「僕」の話である。


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