エピソード47 ミファーの母親

「はい、ただいま~。」


「お母さん、お帰り!今日の夕飯なに?」


「帰ってきて早々悪いんだが、ミファーをうちに連れてきてくれたお兄さんのとこにいくぞ。夕飯はその帰りに食べよう。」


「レドさん、了解!」


ビシッと敬礼する。


「お兄ちゃんに連絡しとくね。えーと…今からちょっと家に行くね…と。」


ピコンッ


「返事きた!いいよ。俺も話したいことがある。だって…」


「話したいことってなんだ?とりあえず行くか。」


「私を連れてきてくれた人って、お母さんのお兄ちゃんなの?」


まだミヒャエルのことを知らなかったミファー。


「そうだよ~!だから叔父さんになるね…でもお兄さんって呼んであげて。」


「お母さんのお兄ちゃん…わかった!」


三人はミヒャエルの家へと向かった…


「少しだけ、ミファーの前の話をするかもしれない…大丈夫か?」


「そのときは耳塞ぐ…」


少しだけしょんぼりした顔で言った。


「お母さんたちは、絶対にミファーのこと離したりしないからね。大丈夫だよ…」


優しくミファーを抱きしめて、言い聞かせる。


「うん…」


やはり過去のこととなるとミファーは不安になるようだった。


(いつか…この子が安心して毎日楽しく暮らせる日がきますように…)


そうこうしてる間にミヒャエルの家へと着いた。


「兄さ~ん、開けて~。」


「開いてるぞ。入れ。」


ドアを開き三人は中に入る。


「ミファーちゃん。久しぶり。二人との生活は辛くないかな?」


「うん!楽しいよ。お母さんもレドさんも大好き!」


「ぷっ…レド、お前だけ距離置かれてんのな…」


やはり、皆そこに引っ掛かる様だ。


「まだってだけだ。距離を置かれてる訳じゃない。」


「さ、座ってくれ。本題に入る。」


三人は並んでソファーに座り、ミヒャエルの話を聞く。


「まず話だが…一つ目はミファーを本当に家族にするかどうか。それはどう思ってる?」


「俺たちはこのままミファーを迎えたいと思ってる。ミファーはどうだ?」


「前には戻りたくない…お母さんたちと一緒がいい。」


俯いて、そう答えた。

二人は、なおさら元の親に渡してなるものかと決意す。


「そうか。わかった。正式に家族にするなら市役所に行く必要があるな。」


「うん。それで…二つ目は?」


「…………」


口を閉じた。そしてしばらくの沈黙の後…


「ミファーの両親についてだ。」


「っ…!」


「ごめんね、ミファーちゃん…辛いのはわかるんだけど、話さないとならない。」


サヤとレドはミファーの手を握る。


「俺たちがいる。大丈夫だ。」


「そうだよ。私たちエージェントなんだから!守ってあげられる…」


優しく微笑む二人にミファーは胸があたたかくなる。


「…うん。お話続けて大丈夫です。」


「ありがとう。ミファーちゃんのお母さんが精神鑑定を受けた結果…罪がなくなったんだ。夫に支配されていたとかでな。」


「!! それで?母親はどうなったの?」


「事件当時が精神的におかしかっただけで、今はなんともない。だからミファーの親権を返せと言ってきている。」


その話を受け、ミファーが泣き出す。


「やだ…あんな人のところに戻りたくないよう…」


「ミファーは絶対に渡さない。母親と話をつける。」


「母親とは俺たちが話す。ミファーには会わせない。」


「二人がそのつもりでよかった。そういう方針で行く。ミファーちゃん、安心してね。」


泣いているミファーを三人で慰めながら、その日の話を終えた…

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