エピソード18 いい夢

「じゃあそろそろ俺は行くから。また会いに来るからね、サヤ。それとレド…サヤを頼んだぞ。なんかあったらぶん殴るからな!」


そう言い残し、ミヒャエルは帰っていった。


「はぁ…最初はどうなることかと思ってたけど、なんだかんだ上手くいったね…」


ニシシとサヤが笑う。


(愛しい…もうこの気持ちに嘘をつかなくてもよくなるんだな…)


「どうしたの?ボーっとして…なんかあったの?」


「ああいや、なんでもない。」


表面上は冷静を装っているサヤだったが、兄にレドへの想いを伝えたことが恥ずかしいということと、自分の気持ちを初めて打ち明けたことで頭がいっぱいだった。


(どうしよう…もう自分の気持ちに嘘はつかないって約束したのに…恥ずかしい…)


表情に出さないように必死なサヤをよそにレドは、


「じゃ、家入って明日の準備するか。」


二人は家に入り、明日の仕事へと備え準備を始めた。

そこへ……コンコンッ…ドアをノックする音がした。


「誰だろう?出るからレドは準備してて。」


そしてドアを開けると…


「ごめんね、押し掛けちゃって。でもどうしても会いたくて…」


訪ねてきたのはギャリーだった。


「なんか、上司がさ?いい夢見られるっていう薬くれたんだよね。よかったら使ってみない?あたしのことは気にしないで、いっぱいあるから。」


そういい、ギャリーはサヤの手に梱包に包まれた薬剤を手渡した。


「いつもお世話になってるお礼だよ!それだけなんだ。じゃ、また明日ね!」


ルンルンとギャリーは帰っていった。そこへレドが来て、


「誰が来たんだ?」


サヤに尋ねる。


「ギャリーだよ。なんかいい夢みられるっていう薬くれた。」


「それ大丈夫か?変な薬じゃないよな…?」


「上司から貰ったって言ってたから大丈夫だよきっと。あ、先にお風呂入るね。」


薬を寝室に置き、サヤは洗面所に向かった。

しかしレドはどうにもこの薬が気になる。


「なんか怪しいんだよな…でもギャリーが騙すとは考えられないな。上司から…か…」


薬の名前を検索し、概要を見ようとしたときサヤが浴室から出てきた。


「ふーっ…さっぱりした!私もう寝るね。この薬試してみようっと。」


そういい、薬を口の中に放り込んで飲み込む。


「あっ……」


「ん?あ、ごめん。レドもこの薬飲みたかった?」


「いや、そうじゃない…おやすみ…」


なんだかぎこちないレドに違和感を覚えながらもサヤは寝室へ向かった。

レドは薬をネットで調べ始める。すると…


(は!?これ媚薬!?いい夢ってそういうやつ!?ヤバい、早くサヤに教えないと…)


レドが伝えに行ったときには、サヤは既に夢を見ているようだった。




サヤの頭の中では……


ベッドで寝ている自分にレドが近づいてくる。


「サヤ…俺の愛しいサヤ…」


「へ?愛しいってな…」


そういいかけるサヤの頬にレドが触れる。


「かわいい…綺麗だぞサヤ…もう我慢できない…!」


キスをしようとするレドをサヤは受け入れる…




現実世界にて…


「おい!サヤ、早く起きろ!あれ媚薬だったぞ!」


「ん…レ…ド…?」


そういうとサヤはレドの首に手をまわし、


「キス…しないの…?」


そう問いかける。


「……っく…サヤ!ここ現実!」


「え?…私レドに…あ…あ…ごめーん!!」


顔を真っ赤にしてサヤは寝室からダッシュで逃げる。


レドはというと…完全に脳が停止していた。

お互いに好きな人など初めてなのに、これは刺激が強すぎたようだった…


「こんなのって…ありかよぉ…」

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