◇21 魔法道具だなんて恐ろしいもんばっかじゃないのか?

 次の日。


 じゃあまたね、とエルフのお姉さんは宿を出た。これから依頼のパラウェス帝国に向かうらしい。



「また縁があることを願って」



 なんて言われたらいろいろと期待しちゃうだろ。


 さて、色々あったから俺もすぐこの町から出ないといけないんだけど……



「ログソン王国は今内乱が起きてるんだっけ。となると……」



 まぁ色々と候補はあるっちゃある。けどどんな国なのかわからないし。じゃあ、聞いてみるのが一番か。そう思い宿を出た。


 彼らはギルドにいると言っていたけれど……俺、ギルドで騒ぎ起こしちゃったんだよなぁ。行きたくはないけれど……あ、いた。なぁんだこんな所にいたのか。

 


「お~ルアンじゃねぇか!」



 そう、ハンターギルドB級のドイール達だ。彼らはギルドに所属するハンター、もしかしたらいろいろな国に行ったこともあるかもしれないし、何かしら情報を持ってるかもしれない。


 ログソン王国の内乱を教えてもらったのも彼らだしな。




「えぇえ!? この町出るのか!?」


「あぁ、ちょっと居づらくなってな。だから、どこかいい国があったら教えてほしいんだ」



 居づらくなった。きっと彼らは察してくれたことだろう。まぁ見てるしな、ギルドでのあの騒ぎ。まぁあれくらいではと思ったかもしれないけれど、俺に事情があると思ってくれるかもしれない。



「そっかぁ、寂しくなるなぁ。せっかく知り合えたっつうのに早くないか? まぁ事情があるのならしょうがねぇけどさ」


「ごめん。でもまた会うかもしれないからその時はよろしくな」


「俺らはギルドの依頼でここら周辺を回るのが基本だが、国を出たりもするんだ。もしかしたらそこで会うこともあるかもな。そん時は飯でもおごってくれよ!」


「あ、はは、うん」



 ばんっ、と背中をたたかれた。うん、HPは減ってないけど痛いな。



「いい国かぁ、まぁ色々あるっちゃあるが……じゃあサイシス王国はどうだ!」


「あぁ、あそこの飯は本当に美味かった!! もういくらでも食えちまうほどにな!」


「あそこの国は海に面してるからな。こことは違って魚とかの海産物が食えるんだよ。俺としてはそこがおすすめだな」


「人間の国?」


「あそこの王族は人間だ。人間って言ったら魔法のスペシャリストだろ。そのおかげでそこは魔法道具が盛んでな、色々と面白いもんがたくさんあるぞ~!」


「入った瞬間の驚きって言ったらなぁ! ルアンは田舎もんだから見た瞬間マジでビビるぞ!」



 おいそれどういうことだよ、何が言いたいんだよ。


 でも、魔法道具かぁ。魔法道具はじいちゃんの無限倉庫にいろいろ入ってるんだけど……まぁ、危ないものばかりだから使ったことないんだよね。



「まぁ国一つ越えなきゃいけないってところが難点か。しかもその国はドワーフの国だしな」


「え?」


「知らねぇのか? ドワーフと俺ら獣人は仲悪いんだぜ?」


「えっ」


「ドワーフは鍛治職人ばかりだ。しかもドワーフは他よりもプライドが高すぎる。でも俺ら獣人は力が強すぎて時々壊しちまう時があるから、毛嫌いしてるんだ。特に職人がな」



 な、なるほど。確かに、この前ギルドに行ったけど、ここの獣人ハンター達は防具は最低限のもの、あとは素手で戦うのか武器を持ってる奴は稀だった。なるほど、そういう事だったのか。


 まぁ、丹精込めて作ったもん壊されたらたまったもんじゃないしな。気持ちは分かる。


 でもまぁ俺としてはそのドワーフの国を通らなくても空からいけるから問題はない。まぁ問題があるとすれば人の目か。陰身魔法で隠すことはできるけれど、俺がいきなり消えたらどこに行ったんだって騒がれる。それは避けたい。



「その国の名前は?」


「国の名前? それは――貿易大国・サイシス王国だ」


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