◇12 息苦しい朝
太陽が上り外が明るくなった頃。
なんか、息苦しい。
何となく、誰かに押しつぶされてるよう、な……
「……お前らぁ……」
俺の寝ている布団の上にふんぞり返って寝転んでいる、三匹。とりあえず、布団を引っぺがして床に転がした。
『ぎゃっ』
『なっ』
『きゃあ!?』
さっさと俺の上からどけっっっ!!!!
はぁー、やっとちゃんとした布団で寝れたってのに。と言っても、野宿したのは昨日だけ。一昨日はちゃんとした自分ちのベッドで寝た。それなのに、今日は何となくやっとちゃんとした布団で寝れたって感じがするのはどうしてだろうか。
それなのにお前達はぁ、俺を殺す気かっ!!
『んも~ルアンったら朝から激しいんだから~』
「言い方っ!! てかお前達が悪いっ!!」
『なんだよ~、恥ずかしがっちゃって~! 一緒に寝るのがそんなに恥ずかしかったのか?』
「精霊召喚解除すっぞ」
『ダメっ!!』
『やだやだやだやだ~』
『朝から煩いぞ、ルアン』
「お前らのせいだろっ!!」
ったく、朝から何てことしてくれてんだ。こっちは疲れてるってのにさぁ。
とりあえず、さっさと風呂場に行こう。顔洗う洗面所とかもそこらしいからな。
「ふぁ~」
「あら、お隣さん?」
「へ?」
あくびをしつつ部屋から出ると、俺の隣の部屋のドアが開いていて。俺の他にいる客が部屋に入る所だった。ん? え、長い耳? エルフじゃん!?
「ど、ども」
「おはよ、眠そうね」
「あ、はは……」
滅茶苦茶美人なエルフのお姉さんじゃないですか。出てる所は出てるし、引っ込んでる所は引っ込んでるし。しかも色白の金髪ってところが俺の好みドンピシャなんだけど。
やばいな、顔緩みそう。
にやけそうな顔を何とか抑えて、じゃあ、とその場を去った。
『ユアンの変態』
「なんだよそれ」
『あの女に鼻の下伸ばしてた~!』
「うるせぇ」
そんなんじゃねぇし!
ただエルフの美人さんが好みなだけだし!!
だってエルフよ? マンガとかで出てくるエルフは美男美女ばっかじゃん? だからファンタジーの中で妖精とかドライアドとかドワーフとか獣人とかあるけど、その中で俺はエルフが一番好きなんよ。
まぁとにかく、さっさと顔洗いに行こっ。
この宿は、まぁ婆さんは感じ悪かったけど、風呂も割かし綺麗だし入り放題、飯も中々の美味。俺、この世界の食事は口に合うみたいだ。見た目は地球で食べたものとは違うけどさ。
いいな、ここ。昨日は空いてる宿が中々見つからずに彷徨ってたけど、ここが見つかってよかった。
「おはようございます」
「遅いよ、さっさと食ってくんなきゃこっちが困るんだよ」
「はーいいただきまーす!」
「朝から煩いよ」
朝ご飯も部屋で食べる事にした。こいつらが騒ぎ出すからな。
お盆で貰って食堂を出ようと思ったけど、食堂のテーブルにちらほら人がいるのが見えた。きっとこの宿に泊まってる人達なんだろうな。
そういえば、昨日誰とも会わなかったっけ。ここ、部屋数はまぁまぁあるみたいだけど、不思議なもんだな。予約してあって深夜辺りに来たとか? それか俺みたいに連泊してる人もいるのかも。
『早くメシ食おーぜ!』
「はいはい、てか言っとくけどこれは俺の飯なんだかんな?」
『何当たり前な事言ってるのよ。変なの』
分かっててねだってきてるって事か。昨日お前達俺の飯どんだけ食ったか覚えてないようだな。まぁ、いいけどさ。大盛りにしてもらったし。昨日めっちゃ美味しそうに食ってるからあげちゃったところもあるんだけどさ。
そういえば、俺の無限倉庫って時間止まってるんだっけ。じゃあ、何か料理とか入れておけば何かあった時食べられるって事だよな。なら今日町散策をしつつ色々と調達してこよう。服もこれだけしかないから何枚か買いたいし、こいつらに必要なものも買いたいし。
「そういえばトロワはずっとその服なのか?」
『これ? あぁ、私の魔法で作り出してるものだから、他のも作れるよ!』
ほら! とその場でくるっと一回りすると、水色のワンピースから白のワンピースにいきなり変わって。今度はピンクのワンピース、緑のワンピースだったりと様々だ。どれもデザインは違うけど、ワンピースばっかだな。ワンピースが好きなのか。
じゃあ、トロワの服の心配はいらないな。バリスとアグスティンは服を着てないからそっちも問題なし。
朝ご飯をたらふく食って、出かける準備をして、食器を持ちつつ部屋の鍵をかけて食堂に向かった。
「ごちそうさまでした!」
「声がデカいよ」
この人、ツンデレか? まぁいいけど。
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