えっ、じいちゃん昔勇者だったのっ!?〜祖父の遺品整理をしてたら異世界に飛ばされ、行方不明だった父に魔王の心臓を要求されたので逃げる事にした〜
楠ノ木雫
◇1 まさかの異世界ぃぃ!?
――祖父が亡くなった。
「へぇ、じいちゃんこんなもん残しといたんか」
俺には父親も母親もいない。行方不明だって聞かされてる。ばあちゃんも俺が物心つく前に亡くなってるって聞いた。だから今までずっとじいちゃんと二人で暮らしていた。
まぁ、ばあちゃんは仏壇に写真はないし名前も書いてないから話でしか聞いた事なかったけどな。とは言ってもばあちゃんの話は2~3回くらいしか聞いた事なかった。じいちゃんが話したがらなかったから。
「じいちゃん学校の行事なんて見に行かねぇって言ってたくせしてさぁ、バレバレなんだよなぁ。来てるの知ってるっつうの」
大事にしまってあった箱の中には、俺が映ってる写真ばかり。機械音痴でスマホすら持ってなかったから、きっと誰かに撮ってもらったんかな。
じいちゃん、口は悪いけど結構優しいんだよな。俺の作るメシだって、美味くないって言いつつご飯粒一つも残さず全部食べるしな。まぁウチが貧乏だったからってのもあるか。
貧乏なのに、ちゃんと学校にも行かせてくれた。義務教育ってのもあったけれど、高校まで行かせてくれた。今俺は16歳の高校一年だ。
「こん中には……やっぱないか」
写真の中には、俺の親やばあちゃん、そしてじいちゃんは映ってない。まぁじいちゃん写真嫌いだしな。撮らせてくれなかったし。
「……はぁ、じいちゃんいないと家ん中静かすぎるんだって……」
じいちゃん声デカいからなぁ。すぐ怒るし理不尽な事言うし。
俺には親戚もいないから、葬式もあげてあげられない。とは言っても、これを言ったらたぶんじいちゃんにキレられると思う。んなもんいるかっ! 葬式あげる余裕があるならその金貯金して勉強でもしてろ!! てな。
そんなじいちゃんだけど、16歳まで育ててくれた。不便な生活もしなかった。金銭面でも、若い頃に沢山働いて稼いだのか、あとは年金か。だから不便してないし。
だから、じいちゃんには感謝してる。
口ではああ言ってたけど、愛してくれたってのも、ちゃんと伝わってたよ。
「ありがとう、じいちゃん」
でも、この謎だけは解明したかった。俺が金髪で瞳の色もじいちゃんと一緒の緑色なのは、祖先に外国人が混じってるのか?
まぁじいちゃんに聞いても日本人だって言い張ってたしそうなんだろうけど……突然変異?
「これも、じいちゃんのか?」
棚の奥にしまってあった、とある物を見つけた。
大事にしまってあった箱の中。一体何が入ってるんだと思いきや……
「何だこれ。じいちゃんの?」
一緒に入っていたのは、腕輪ってやつか。金ぴかで宝石みたいな石がはめ込まれてる。これ、売れっかな。でもニセモノだったらいやだな。
「え、なにこれゆるゆるじゃん」
大きすぎて、手の大きい俺でも簡単に通せた。こんなの誰が使うんだよ、もしかしてじいちゃん誰かに
「えっ……」
いきなり、景色が変わった。
さっきまで家にいたはずなのに、周り一面真っ白。
そして、目の前に現れたもの、それは……
______________
STATUS
名前:奥村留衣 Lv.1
職業:
称号:勇者の孫
______________
HP:∞
MP:∞
筋力:∞ 攻撃力:∞
速度:∞ 防御力:∞
感覚:∞
______________
【無限倉庫】
【鑑定】
【魔法無効化】
【絶対領域】
【剣士の心得】
【五大元素魔法】
【治癒魔法】
【複合魔法】
【精霊召喚】
【武器召喚】
【古代の書】
【全反射の鏡】
【全域バリア】
【超能力】
【変身魔法】
【陰身魔法】
______________
【天空の女神の祝福】
【深森の魔女の祝福】
【深海の人魚の祝福】
______________
物理ダメージ減少率:100%
魔法ダメージ減少率:100%
______________
ゲームとかでよく見るものだった。なにこれ、しかも俺の名前書かれちゃっ……
「ゆ、ゆ、勇者の孫ぉぉぉ!?」
は? お、俺、勇者の孫なの!? じゃ、じゃあじいちゃんが勇者って事に……
待て待て待て待て、落ち着け、とりあえず俺落ち着け。
「ま、待てよ……」
思えばじいちゃん、やたらと身体元気だったかも。112歳にもなって背中曲がらずシャキシャキ動いてたし、運動って言って剣道やってたよな。庭で。しかも俺の知ってるのとは全然違う動きで。
一回だけ本気っぽかったの見たけど、すんげぇ音出てたし、目の前の木倒しちゃうんじゃないかってくらいの風出ててやばかったのを覚えてる。
あ、なるほどなるほど、そういう事か。……これで納得していいのか? 今あり得ないこと目の前で起きてるけど。
「えっなにこれ!?」
さっき
「ったくもぉ、どうしろってんだ……」
とりあえず現状把握? と周りをキョロキョロしてみたら、気付かない内に真っ白な空間が森の中に変わっていた。
すんごく気持ちいい風が吹いていて、心地良く聞こえる揺れる葉っぱの音も感じる。
いきなりの事が多すぎて、全然気づかなかった。
「どこだよ、ここ」
こんな所に放置か? こっちに連れてきた奴、早く出てこいよ。
あれだろ? こういうのって異世界転移って言うんだろ。マンガとかでよく出てくるやつ。じゃあここは異世界か。
ここ、もしかしてじいちゃんが今までいたとこ? じいちゃん、ずっとあの家にいたわけじゃなかったみたいだし。でもじいちゃんも俺も日本人のはず。どうなってんだ?
ま、それはあとで考えるとして……
「さてさて、俺のステータスはっと……」
なんかさ、勇者の孫って所に気を取られてたけど、他も色々とおかしいというか、恐ろしいというか。何だよこれ、HPとかMPとか全部無限ってどういうことだよ。
え、じゃあ俺死なないって事? この下に書いてあるスキルっぽいのもずっと使っててもMP消費なしだから大丈夫って事? おいおい最強かよ。ゲームとかだったら無敵じゃん。
これ、もしかしなくてもチート? うわぁ、それはそれで嫌なんだけど。だって何するにしても恐ろしい事が起きそうじゃん。面倒事なんて
あとこの物理ダメージ減少率と魔法ダメージ減少率。100%って書いてあるから嬉しいんだけどさ、これ意味なくない? 防御力無限だし。まぁもらって嬉しいものは貰っとくに越したことないけど。
「さてさて、スキルってどう使うんだろう。う~ん、【無限倉庫】」
そう唱えてみると、いきなり現れた小さな扉。しかもいくつもある。え、これが【無限倉庫】か。いいじゃんいいじゃん、使えそうじゃん。
しかもナンバーが付いてて【No.1】【No.2】って書かれたプレートが付いてるからどこに何を入れたのか簡単に分かるって事だ。全部で10個か。結構あるな。
お、触ってみたらシステムウィンドウ出てきた。
______________
【無限倉庫】
【No.1 薬】
・漢方薬
・HPポーション
・MPポーション
・麻痺解毒ポーション
・解毒ポーション
・霊薬
etc.
______________
ゲームっぽいの入ってた。てか中身あったんだ、そっちの方が吃驚なんだけど。誰が入れたんだろうか、と思いつつ隣の【No.2】を覗いてみたら……
『ガキから貰った花』
の欄を見つけた。
それで分かった、それだけで分かった。
あぁ、そういう事かって。
「あ、はは……こっちでも遺品整理しなくちゃな……」
そうだよな、じいちゃんってそういう人だったよな。そっか、ガキから貰った花か。
取り出してみたら、何か入れ物に入った一輪の小さな花が出てきた。システムウィンドウのその欄をタップすれば出てくるらしい。
この入れ物って、もしかして時間を止めるとか、そういうやつなのかな。全然枯れてない。きっと貰った時のままなのかな。
「なんか、色々と貰っちゃったけど使っていいよな、じいちゃん」
まぁ、それを聞いたら超絶痛いげんこつを喰らいそうだけどな。
じゃあ、じいちゃんはこっちの人間って事か。なら、行方不明の俺の両親って、ここにいる感じ?
でも、俺の家族はじいちゃんだ。それは変わらない。
もし会えたとしたら、俺、どう思うだろう。
まぁでも、それはそん時考えよう。
さてさて、他には……
______________
【無限倉庫】
【No.9 ゴミ】
・神聖剣(両手剣) ・神聖剣(片手剣)
・神聖剣(双剣) ・神聖刀(長刀)
・神聖刀(短刀) ・神聖槌
・神聖斧 ・神聖弓
・神聖杖 ・神聖槍
・神聖爪 ・神聖銃
・神聖鞭 ・神聖盾
・神聖ハンマー ・神殺しの鎌
・太陽神ノ鏡 ・叡智ノ書
・虚構ノローブ ・士魂ノ腕輪
・宵闇ノ刀 ・宵闇ノ剣
・宵闇ノ短剣 ・深紅ノ剣
・深海ノ聖槍
etc.
______________
いやいやいやじいちゃん、それゴミって言っちゃっていいの、駄目でしょ、罰が当たるぞ、おい。てか一体どこからこれ集めてきたんだよ、ゴミならちゃんと元のところに戻しとけよ。
こんな扱いされるならちゃんと大事にしてくれる奴の所の方がいいだろ。
______________
【無限倉庫】
【No.8 貰いもの】
・悪魔の心臓
・呪術師の魂
・巨大龍の心臓
・最高級SSSランクの葡萄酒
・レテウス鳥の燻製肉
・妖精の羽根
・精霊の魂の欠片
・不死鳥の羽根
・ノアの箱舟
etc.
______________
待て待て待て、何でこんな所に酒と燻製肉が入ってるんだよ。正気か? いや、あんな性格だ、あり得る。でも絶対この扉は開けない方がいい、絶対開けない、うん。見なかった事にしよう。
「じいちゃん……マジで期待を裏切らないわ……」
とりあえず、あの人の孫に生まれて良かったのかどうか疑ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます