最底辺ダンジョン配信者は底辺のトップになってた

水都suito5656

第1話 女子高生配信者がみんなバズると思うなよ!(改)


県立蒼日高校に通う華子の朝は早い


ふんふんふーん♪

私はいつもよりご機嫌でダンジョンを歩いていた。


明日から夏休みだ。いえーい!


鼻歌を歌いながら、なんなら軽くスキップして、家の裏手にあるいつもの散歩コースを進んで行く。


ここはみんなも大好き初心者ダンジョン

今日は何が狩れるかなぁ~ あ


「えっ?」


草原の中央に置かれた卓袱台の前で、姿勢良く正座していたゴブリンが振り返った。

食事中なのかその右手には箸を持ち、左手に茶碗持っていた。

口元には大好きな焼き魚を咥え、不思議そうにこちらを見ていると・・頭が床にポトリ


「悪即斬だね!」


華は素早く頭部を拾うと、ささっと片耳をこそぎ落とし、よいしょっと胴体に戻そうとする。


・・・む、難しい


【非情すぎるw】

【食事時に観るんじゃなかった】

【このゴブリンが不憫でならない】


空中に浮かぶダンジョンカメラのモニターにコメントが流れている。

そんなコメントを見ること無く彼女は先へと進んでゆく。


おかしい !どうして人が来ない?

チヤンネル開設してそろそろ1年だよ!

赤子だって歩ける日々続けたんだよ。

それなのに登録者数一桁・・・


女子高生なら誰でも見に来てくれるんじゃなかったの!

えっ、実はわたし女子高生じゃなかった?


              *


今から10年前。

突然世界中にダンジョンと呼ばれる洞窟が現れた。

その中には魔物と呼ばれる異形の生物がいて、探索に来た人々を次々襲い始めた。

ここぞとばかりマスコミは煽った!


このままでは人類存亡の危機だ!


人々は恐怖した。


そんな不安の中、とある村で事件は起きた。

逃げたペットの子犬を追いかけ少女がダンジョンに入ってしまったのだ。


「ポチ待って!」


少女は子犬の名前を呼びながら洞窟の奥へと進んで行くと前方から、子犬のなく声が聞こえてきた!

ポチ!


急いで鳴き声の方向へ駆けてゆくと、いままさに子犬に襲いかかろうとしている魔物が見えた。スライムだ!


「こんのぉ!ポチを離せ!」


彼女はそう叫ぶと、咄嗟に右手に持っていたスマホを、力いっぱいぶん投げた! 


あ、まずい!


投げた瞬間怒れる母の姿が頭をよぎったが、後の祭りであった。


色んな意味で恐怖していた彼女は、勢いよく飛んだスマホがズボッとスライムの中心部を突き抜けるのを見た。


核を失ったスライムはドロリと溶けていった。


「よがっっだ!!」


駆け寄って子犬を抱きしめながら、素早くスマホを回収、

良かった!壊れていない!

子犬を抱きしめながら涙がこぼれ落ちた。

なんの涙かは問うまい。



後にその時の様子を聞いた人々は、子どもが魔物が倒した事に衝撃を受けた。


そして知った。   

魔物は弱点がある事を。

しかも子どもでも容易に倒せる場所に。


試行錯誤した人々は魔物に核と呼ばれるものが存在し、そこを破壊されると消滅することを知る。

さらに幸運なことに、初心者ダンジョンと呼ばれ洞窟には魔物はひとつしか現れなかった。


そして生息する魔物は圧倒的に弱かった。

そんな初心者ダンジョンは人々に新たな娯楽を提供した。


ダンジョン配信!


魔物との戦いを配信しだしたのだ。

この神秘な映像は人々の間に広がり、特に女子高生が魔物を相手に戦う姿が人気を呼んだ。





・・・その筈なんだけどねえ


来場者数今日も一桁。

収益化?なにそれおいしいの。


もう辞めようかな 今のところ赤字だしねえ


華は配信が好きじゃなかった。

というかゴロゴロすることが大好きだ。


うちはあまり裕福じゃないので、お小遣いはほんの少ししか貰えない。

いや感謝してますよお母様!


それでもお菓子は食べたい、漫画も読みたい、ラノベも読みたい、でも人見知りな性格でバイトは長続きしなかった。


そんな時ひらめいたのがボッチでも出来るダンジョン配信だった。

そう!今の私は女子高生!

これがバズらないはずはない!

  

・・・ということを考えていたこともありました。


寂しくなったお財布を見て決意する。


よし2年生になるまでは頑張ろう!


駄目なら自分にできるバイト探そう!


そう何回目かの決意をして、今日も視聴者を放置した放送は続くのだった。


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