第10話 呪いの少女

「すみませんでした。もう大丈夫です、ごめんなさい」

「いいよいいよ。長旅で疲れたんだろ。今日は休めよ」

「いえ! わたし――」


 私は大丈夫です、そう言おうとした時、目の前を赤いトンガリ帽子を被った一人の少女が通り過ぎた。

 途端に沸き起こるゾワゾワという不気味な感覚。

 この子は危ない。

 直感的にそう思った。

 

(虚構を暴き真なる姿を現せ。破邪の瞳)


 私はこっそり法術を使い、改めて少女の姿を見る。


(あちゃあ……あの子呪われてるわね)


 俯きながら受付へと向かう少女、少女の体のラインに沿ってどす黒いオーラがモヤモヤとまとわりついていた。

 呪い自体はそこまで強くないようだけど、少女の明るくない表情を見るにだいぶ参っているようだった。


 振り返った少女と目が合う。

 しかしすぐにふい、と背けられ、少女は足早にギルドを後にした。


「バルトさん!」

「おわっ! いきなり大声だすなよ! んでどした?」

「今の子知ってますか?」

「今の子……? リーシャの事か?」

「リーシャさんと言うのですね。単刀直入に言います、あの子呪われてる」

「何だと!?」

「他人に害を及ぼすタイプではないのが救いですが、このままだとリーシャさんが危ないです!」

「まじかよ……なんか最近元気無いし素っ気ないっていうか、人が変わったみたいになっちまったんだけど、そういう事か!」

「そうだと思います!」

「くそ! あいつどこいったんだ!」

「さっき受付で何か話してました! 聞いてみます!」


 善は急げ、私は受付のお姉さんからリーシャの行く先を聞いてみた。


「リーシャちゃん? 依頼を受けて……そうそう、カルネア遺跡近くでの薬草採取ね」

「かるねあいせき! どこですか!」

「どこ、って……」

「フィリア! カルネア遺跡なら俺が分かる! 行くぞ!」

「おす! ありがとうございます受付の綺麗なお姉さん!」

「あらあら、何か分からないけどありがとう」


 ニコニコ顔のお姉さんに手を振り、手を引かれながら私はリーシャの後を……あと、あとをおおお!?

 手!


 手をつないでいる!!

 私が! バルトさんの! 手を!


 ちょっと待ってよバルトさん大胆過ぎませんか!

 私握手はした事あるけど、男性にこんな力強く手を握られるなんて事はぁああ!


「フィリア! 呪いってのはどんなんだ!」

「ぴぇっ!? そ、そそれは分かりません!」


 小っ恥ずかしくて顔の穴という穴から火を吹きそうになりながら答える。

 今なら私ドラゴンになれる気がする。

 鼻と口から恥ずかしブレス吹ける気がする!


「ちっ、本人捕まえないとダメか」

「あ! いました!」


 大通りの人混みの中、リーシャの赤いトンガリ帽子が見えた。

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