第4話 お誘い
「リザレクション!」
詠唱を終えた私の周囲に金色の魔法陣が広がっていく。
法力の余波で私の髪が浮かび上がり、漣のようにゆらゆらと揺れる。
必死に法力を集中させていき、対象の男の傷口を見る。
欠損した内臓やちぎれた指が徐々に修復されていく。
「お、おい……すげぇ……」
「なんと神々しい……」
「道士様よりも数段上の腕前じゃ……」
「まさか噂に聞く聖女様か!?」
周りの人達がなにやらうるさい。
自分の中の法力がごりごり減っていくのがわかる。
治癒魔法の中でもトップクラスの回復力を持つリザレクションは術者の法力と大地や風、草花から少しずつ生命力を分けてもらう大技。
聖女候補達は誰も習得出来なかったけど、聖女の刻印を持つ私は難なく習得した。
まさかここまで法力がごっそり持っていかれるとは思ってもみなかったけれど。
「……はぁ……っはぁっ……おわり、ましたよ」
「う、お、俺は……?」
術式が終わり、崩れ落ちそうになる体を気合で持たせる。
ぐったりしていた男の血色はよく、傷も全部塞がっていた。
「「「おおおおおーー!」」」
ギャラリーから大きな歓声があがり、惜しみない拍手が私に向けて送られる。
少し、いや結構恥ずかしい、けど、嬉しい。
私は照れ隠しをするように手で口を覆い、ぺこぺこと頭を下げる。
「俺はバルトってもんだ。冒険者をやってる。大剣使いだ。今回は本当に助かった。ありがとう」
「あ……」
そんな私に手を差し出し、頭を下げるバルト。
私が回復している間に手を拭ったらしく、多少血の汚れはあるが少しは綺麗になっている。
ごつごつしてて男らしい手。
バルトの手を握り返し、その体躯に息を飲む。
鍛え上げられた肉体はインナーの上からでもわかるほど綺麗なボディラインを描いている。
振る舞いも爽やか。
めちゃくちゃイケメンというわけではないけれど、意思の強そうな瞳はまっすぐに私を射抜く。
ごくり。
喉が鳴る。
これが冒険者、己の肉体のみで活路を開く猛者達。
すごい。
私は素直にそう思った。
聖王国にも冒険者はいるが、あまり関わりがなかった。
「あの……」
「あ! すみません! 私はフィリアと申します! しがないビショップです!」
「そうか、本当にありがとう。君がいなかったらこいつは、ケントは死んでいた」
「お友達ですか?」
「友達、っていうよりは冒険者仲間だな。普段俺達はソロでやってるんだが今日はたまたまペアで依頼をこなしてたんだが……」
「だが?」
「途中でブラッドベアに襲われてな、何とか倒してきたんだがこのザマだ。っつつ……」
「大丈夫ですか!? あなたも怪我してるじゃないですか!」
「だ、大丈夫だ。こんなん唾つけときゃ治る。それにもう出せる金がねぇんだ」
バルトは目を逸らし、恥ずかしそうに頭をかいた。
なんの話だろう?
「お金?」
「こんな重傷者をここまで、っていうより全回復させちまうようなビショップだ。相当お高いだろ?」
「え? え?」
「何キョドッてんだ?」
「いやあの……お金は、いりませんよ?」
「はぁ!? 何言ってんだ!? ビショップに頼んだら普通の治癒だけでも銀貨十枚は軽く飛ぶぞ!」
「そうなんですか?」
バルトの言っている事がいまいち理解出来ずキョトン顔の私。
治療院ならまだしも、こんな流れのビショップがお金をもらえるわけがない。
======================================
ここまで読んでくださりありがとうございます。
面白い! 続きが気になる! と思ったそこの貴方! ぜひ小説のフォロー、そして☆評価をお願いします!
応援コメント、応援レビューなどもモチベアップにつながるのでぜひぜひよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます