猫は空なんか飛ばない

沖ノキリ

第1話 ダマリャーノ、分厚い本を買う。

 今日から十月、神無月である。

 まあ、宇宙に住む我に気候など関係ないのだが、月見バーガーを食べつつ、文化の秋にいそしむのだ。卵アレルギーなので卵は抜きだが、些細なことだ。


 我の名はダマリャーノ。

 ちょっとばかり、むちっとしたボディがキュートな宇宙猫そらねこだ。


 宇宙猫とはなんぞやとな?

 広大な宇宙の猫の額ほどのスペースに住んでいるから宇宙猫だ。宇宙と書いて『そら』と呼ぶのは、お約束だぞ⭐︎

 おや、万能AIロボの猫代ねこしろさんが、お茶を持ってきてくれたようだ。


「スケッチ帳なんか引っ張り出して何してるんです?」


 うむ、いい質問だ、猫代ねこしろさん。読者にさりげなく、我の行動を説明できるぞ。


「お絵描きの練習だ」

「前みたいに、iPadでやればいいじゃないですか。消しゴムカス、ちゃんと捨ててくださいよ。それになんです? そのタウンページみたいに分厚い本」


 我の手元には、厚さ4センチほどの本、数年前に絵が劇的に上手くなると一世を風靡したという『ソッカの美術解剖学ノート』がある。

 流行がとっくに終わってから、やっと手を出すあたりが実に我らしい。ところでタウンページって、まだ発行しているのか?

 

「人物像の全身像をまともに描きたいと思って買ってみた。人間、人体は毎日見ているから、嘘を描くとすぐバレるものだ」


「あー、コップとか、画力が思いっきり出ますもんね。ちなみに美術の成績は?」


「中学の時は4」


「結構いいじゃないですか」


「10段階評価だ」


「……」


 学生諸君、提出物はきちんと出そうな⭐︎

 あと雑な性格が災いして、大概、色塗りで失敗していたというのも減点理由だ。


「毎回、途中で飽きてしまってな〜」


「さすが宇宙猫。自由すぎる。で、どんな感じです。その本」


「とりあえず650ページ、一通りざっと読んでみた」


 猫代、こいつまたかという顔で引いてやがる。

 この本はイラスト部分が多く、コラム的なページも多いので、目を通すだけなら意外と短時間で読めるというのに、人を変態扱いしおって。


 さて、『ソッカの美術解剖学ノート』についてだ。コラム的な部分を楽しいと思うか、冗長と思うかはその人次第。我は結構楽しめた。作者のお国柄もあって、引っかかる表現がなきにしもあらずだが、古い本読んでいれば、時代に合わない表現なぞしょっちゅう出会うものだしな。


 初見の感想。使っているうちに変わるかもしれん。


・読み物として面白い。

・結局、練習って何したらいいの?

・本気で一からの人には、ややハードルが高い。

・正確な人体を描きたいという目的には合致。

・古いジェンダー観はスルー。


「やってみると、さすが大人だ。意外と模写できる。描けていると思っていた顔面すら、結構な嘘を描いていたことがわかって、楽しかった」


 最終的にどこまで上手くなるかはわからん。だが、少なくとも下手にはならんだろう。

 ということで、本日の報告はここまで。


  

 Au revoir!


          

✣✣­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–­­–✣✣



 この度、エッセイというほどでもない、日記的な雑文を書いてみることにしました。

 


 なぜかといえば、三人称主人公視点で小説を書いてみたところ、文章固すぎない?と言われました。


 んーこれでも固いのかー。

 流行とずれているのはどうしようもないとして、もう少し読みやすくしたいと改稿を重ねているうちに、今度は一人称が混じっていると指摘されました。


 あ、本当だ、と気がついたものの、直すと元のお堅い文章にリターン。それに、だんだんと手癖らしきものが出てきている。


 さて、どうやって折り合いをつけたものかと、このところ夜しか眠れないどころか隙あらば寝ていたのですが、一度、一人称で文章を書いてみるのも一手と思い、やってみることにした次第です。


 自分が主役の一人称視点は、どうにも気恥ずかしくて書けなかったので、代打の猫キャラですが、どうぞよろしくお願いします。

 

 

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